58話 ページ35
、
「先生」
帰り際、勝己に呼び止められた。
「ん？」
「先生」
「え、なに？」
「せんせ、先生…」
そう言って肩口に顔を埋めてくる。
「…ん？なに、どないしたん？」
前みたいな凶暴性はなくて、なんだか弱ってるように見えてその柔らかい頭を撫でる。
「…A」
「せめて先生はつけてくれや」
なんや様子がおかしすぎる…
「取り敢えず相談室空けよか。」
……
「ほら、前座って」
「…ん」
勝己が座ったのを確認して話し始める。
「…なんかあったん？」
「ん」
「ん、じゃわからへんよぉ…」
まあ勝己もお年頃やし、色々あるやろうけど引き止められた限り何か話はあるんやろう。
ま、別に時間もあるし話してくれるまで待とうか。
「…先生は、好きなひと居るのか」
「ヒェ！？エッ、あ、ま、まぁ…その、いま…す…」
予想外の質問。
最後あたりがしぼんでしまったが、事実を言った。
すると勝己はさらに唇をきつく噛む。
「そんなに噛んだら血出るで」
唇をつん、と人差し指でつつく。
ビクッと体を跳ねさせて此方を見てくる。
「それ、わかってやってんのか」
「…？ご、ごめん嫌やったか？」
ちっげえよ鈍感！とさっきまでは誰かと思うほど静かだったのに、急にうるさくなった。
人のこと言えないけど情緒不安定すぎる…
やっぱ思春期だからこういう事もあるのか…？
俺3年間保体2だったからそういうのには疎い。
※(ただの鈍感)
大丈夫かこいつ、とつい癖で顔をじっと見つめてしまう。
きっと今の俺は頭に何個もの？マークを浮かべてるだろう。
勝己は少し顔を赤くさせて急に叫んだ。
「先生！！！！」
「うぇ！？な、なに！！！」
「好きだ！！！！」
……
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作者名：花苑 x他1人 | 作成日時：2017年9月6日 16時
