45話 ページ18
、
個性、洗脳
何も言わず俺の目の前に立ち、その隈のある不機嫌な目で睨まれる。
俺は黙ってその目を見つめ返す。
「…なあ」
「ん？…！！」
俺が言葉を発した瞬間、身体が硬直した。
「前に向かって歩け」
そう心操くんが言うと俺の足は勝手に歩いていく。
…でも洗脳、と言っても脳までは操れないのか。
脳が使えりゃこっちのものだ。
俺は思い切り複製させた腕で自分の腹を殴る。
そう指令した。
「っ！げほ、ごほ、」
パッと鎖が外れたかのようにその場に蹲る。
あ、あかん、強く殴りすぎた…
心操くんは目を見開いている。
「そ、そんな…」
「げほ、ぅえ、…心操くんの個性、脳までは操れやんのよな？
俺の個性、複製移動は全部脳からの指令で動くから、脳から俺を殴れ、って指令を出せば体を覚ます事が出来るんや。」
まあ無理やり痛みで覚ましただけやけどな。
そう言うと心操くんの顔が歪む。
その顔には色んな感情が入り混じっていた。
「…どうせ、お前も思ってんだろ。敵向きの個性だって。」
その言葉に耳を疑った。
「…は？敵向きぃ？？ヒーローになりたくてここに来たくせになに言うとんの？」
「…は？」
「 ヒーローになりたいんやったらそんな余計な感情は捨てろ。
そんな事考えりゃ俺の個性だって使いようによったら覗きだって痴漢だって出来るからな？やったことないけど！」
敵とヒーローは紙一重。
でもそれは他人が決めることじゃない。
例えば死柄木弔も、ヒーローになりたいと思ったなら十分その素質はあったんだろう。
でも、理由はともあれ自分で道を歩いて行ったんだ。
世の中、そんなもんなんだよ。背中は幾らでも押したるけど歩くのは自分やで。
俺は目を見開いてる心操くんに手を伸ばす。
だから、さ。
「せっかくヒーロー向けのええ個性持っとるんやから前だけ向いときゃええんよ。」
その逆立った髪ごと頭を撫でた。
……
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作者名：花苑 x他1人 | 作成日時：2017年9月6日 16時
