ねじれの位置にいる相方が何か絡んでくる（過去編） ページ8
破壊という言葉で濁された死に、いつの間にか慣れてしまった。(ブラック本丸審神者side)
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思い返してみれば、何か間違っていたような気がしなくもない。けれど、間違いのままでもういいと思ってしまった。
合理性を求めていたのは事実だ。
そこに人らしい感情や心など必要ないと思っていたのも事実だ。
心を知れば、弱さを知る。
感情は判断を鈍らしてしまう。
守れるものも守れない。
失わなくていいものも失ってしまう。
鉄から生まれたものがまた鉄に還る。
つまり刀剣男士というものに生物学的な死という概念はないのだと思っていた。そこに痛みはあれど、悲しみなどないと信じていた。
だって、還る場所があるだけ、死のその先がわからない人間よりはずっと楽じゃないか。
それなのに。
『あなたは間違っています！こんな本丸運営、許されるべきじゃありません！』
いつだかの演練相手の、少し若作りをした、少女のような話し方をする女の言葉がいつも俺を苛む。
曰く、刀剣男士は物ではなく神様であると。
曰く、家族同然の存在であると。
しっかりしっかり愛を持って守られながら、女が吐き出した言葉は到底受け入れられないものだった。
神様でありながら、家族でもあると。
はて、女の言う家族とは一体どのようなものなのか。
男からしたら気に入らないだけの見目麗しい彼らに向ける視線と、その逞しい腕に絡む女の本心は、果たして本当に家族としての慈愛に充ちたものだったか。
正解は知らない。
けれど出した答えは否。
ならば俺の中での正解は否なのだ。
『あんたの考えや価値観は否定しないが、それを赤の他人の俺に押し付けないでくれ。』
否定しない。
理解するとも受け入れるとも言っていないが、それが幾分か心の狭い自分に出来る最大の譲歩だった。
分かり合えないが、そちらがそれで成り立っているのなら勝手にすればいい。
そう、暗に言ったつもりだった。
けれど、審神者として、主として。
本当だったら見向きもしてくれないような美男子たちに肯定され続けた女は、妥協を許さない。
己が正義と疑わなかった。
『いいえ、何度でも言いましょう。あなたは間違っています。刀剣男士たちがどれだけ傷ついているか、どうしても分かってくれないのならば、通報という手段を使わせていただきます！』
事実、守られておきながら、女は古い女性向けの漫画の主人公のように、愛する者を守るのだと正義を振り翳す。
なんて肯定に慣れ切った愚か者だろうか。
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作者名：伊織（神様卒業） | 作成日時：2019年4月28日 23時
