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元太くんが前でわたしが後ろ。行き先も決めないままただただ海沿いを歩く。時折足を波に攫われそうになって、冷たくて気持ちよかった。日が落ちる前でも暑さは居座ったままで、忘れかけていた汗がまた首や背中に滲み出す。
｢今日、たのしかったね｣
｢うん なんか青春って感じした｣
｢俺も ｣
さらさらと風に靡く金色の髪の先をみつめて、また胸がときめく。白に近い金は、現実離れしてて未だにまだ信じられない心がどこかに置いてけぼりにされている気がした。彼の向こうにある青かった空もどんどんと赤色が混ざって紫になり始める。そろそろ帰らなきゃ。でも最後に聞きたいことがあるから、それだけ。
｢ねえ、元太くん｣
｢ん？｣
止まって振り返ってくれる元太くんの近くへ小走りで近付く。わたしの蹴った海の粒が水面を楕円に歪めた。息が詰まるけど、緊張してカラカラに喉乾いてるけど、小さく言う。
｢なんで、わたしとサボろうと思ったの｣
多分1番最初に来た人とサボろうと思ってたとかなんだろうと思う。でも他にも方法はあるはずだ。たとえばだけれど、クラス1のマドンナとか仲の良い友人とかわたし以外にも選択肢はたくさんあったはずだし。それなのに、なぜ彼が自分を選んだのか、気になっていた。
本当は予想通りの返事が返ってきて、傷つくのが怖くて、聞くつもりはなかったけれどこれは最初で最後だから。
ザザ、とさざめく海がわたしたちを急かしている。
｢最初から、Aに決めてたって言ったら？｣
彼の回答は、わたしの理想だった。
｢どうして、｣
｢んー、わかんない
わかんないけどAがいいって思ってた｣
ごめんね、って元太くんが顔を歪めて謝罪の言葉を吐いた。違う、謝って欲しいわけじゃないの。なんで、胸が張り裂けるぐらいぎゅっと締め付けられて、喉が焼けるように苦しい。
顔中が熱くて、思わず俯いた。きっと頬も耳も目も赤くてとても見られていい顔じゃない。見られていい顔なんか、わたしにはない。
握りしめた拳を開くように、元太くんの手が重なった。お互いに汗ばんでいて、真っ赤な顔も気にせず顔を上げた。
酷く真剣な表情。
わたしよりも何倍も大きい瞳に間抜けな私の顔が映り込む。
その奥に吸い込まれたい、と思った。
｢A、ありがとう｣
元太くんの顔が傾いてわたしに落ちてくる。
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‥(プロフ) - mm.さん» ありがとうございます。楽しんでいただけてとってもうれしいです＊ (2021年4月29日 18時) (
レス) id: 2908e82d36 (このIDを非表示/違反報告)
mm. - 久しぶりにこころが震えました。他の作品とはまた違って私が求めていた世界観。最高です。続き楽しみにしてます。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 44e01e6971 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mam | 作成日時：2021年1月26日 20時
