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その日から断続的に降り続いた雨で、あの場所に行くことは約一週間ほど無かった。カラッと晴れて今日こそはと、螺旋階段を1段飛ばしをして扉まで進む。踊り場最後に足を踏み込んだ、息が詰まった。
扉にはガムテープが貼られていた。ドアノブには錆びた鎖でぐるぐる巻きにされた挙句南京錠まで付けられている。呆然として、無意識に踏み出した足の先で何かを蹴ってしまった感触。見れば、カラカラに枯れてしまった黄色の花束らしきものが吹き飛ばされて、哀しげにぽつんと止まっている。
講師の言葉も聞くフリで、ビル4階からの景色を見つめている。忙しなく過ぎる車と救急車のサイレン、どこからか聞こえる耳鳴りのような高く不愉快な音。
心にぽっかりと空いた穴を俯瞰で見てみる。埋められるものもない、この大きく欠損した心を満たしてたのは、なんでも優しく温かく受け入れてくれた彼の
そこで、やっと気がついた。
逃げる場所が無くなって悲しくなってるんじゃないってことに。
私がこんなに落ち込んでるのは、吉澤くんに会える口実が無くなってしまったからなんだってことに。
…
私はそこから必死に吉澤くんを探した。たくさんの学科の人に声をかけ続けて友人にも同じ学科の男の子にも協力してもらった。
こんなに誰かの為に人に助けを借りたのは初めてで、がむしゃらだったと思う。レモンイエローのフリフリしたブラウスに、ハイブランドの香水を振りかけた首筋に、朝時間をかけてセットしている前髪に、汗が滲む。吉澤くんを見つけ出したくて、精一杯だった。
どうしても会いたかった。今、どうしても伝えたい言葉があったから。あの日が最後なんて嫌だから、こんなことになるぐらいならもっと早くに伝えればよかった、なんて後悔も、もう遅かった
たどり着いたのは、彼の元じゃなかった。吉澤くんの親友だという先輩からの一言で私の希望は一瞬でどん底へ崩れ落ちた。呆然と、その言葉を聞いて何も言えなくなってしまった
｢閑也は 、もういないよ｣
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‥(プロフ) - mm.さん» ありがとうございます。楽しんでいただけてとってもうれしいです＊ (2021年4月29日 18時) (
レス) id: 2908e82d36 (このIDを非表示/違反報告)
mm. - 久しぶりにこころが震えました。他の作品とはまた違って私が求めていた世界観。最高です。続き楽しみにしてます。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 44e01e6971 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mam | 作成日時：2021年1月26日 20時
