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この夏におろしたローファーの踵はもう元に戻らなくなりそうなぐらい踏み潰して、ぎらぎら照り付ける太陽の下を走り続けた。肺が燃え上がるように熱い感覚は体力テストのシャトルランをし終わった後に感じた時以来で苦しい。元太くんに手を引かれて着いた場所は駅から2番目に近い無人駅だった。肝心の元太くんは膝に手をついて息を整えていた。
｢っねえ、げんたくん｣
｢ん？なに｣
｢電車乗るの？｣
｢そう、乗るよ｣
元太くんが駅の構内に入っていくのに慌てて後ろをついて行く。券売機の上の路線図と数秒にらめっこした後、慣れた手つきで一番高い運賃の切符を2枚買っていく。
｢わたし自分で出したのに｣
｢いいのいいの！俺が誘ったんだから｣
はい、Aの分と差し出された切符を受け取ってふたりでホームで待つ。日陰が心地よくてカンカンと光り続ける太陽を細目で眺める。
ふと親の顔を思い出した。皆勤賞を狙うと言っていた1年生の時のわたしと今や目を合わせることもできない。眩い青春の1ページを刻むことが出来ると思っていたわたしはどこから道を間違えてたんだろう。
今わたしはクラスの男の子と逃避行している、現実味のない事実に胸が高鳴っている。
元太くんの方を見上げれば先程のわたしと同じように空を見上げていた。快晴の青は元太くんにぴったりの色のように思える。時々吹く熱い風が金色の髪を撫でる時、毛の1本1本に光があるような気がしてならなかった。
ゆっくりと滑り、緩やかに止まる電車にふたりで乗り込む。通勤通学ラッシュを終えた電車には夜勤帰りのスーツ姿の男性やトランクを抱えた老夫婦等で疎らだった。空いていたオレンジ色の座席に深く腰掛けて息を吐いた。ひんやりとクーラーの効いた車内は心地よくてまた流れる汗を掌でぐっと拭う。
｢暑いね｣
｢うん、｣
がたんごとんと揺れる車内で元太くんの声はすこし小さい。暑いね、と呟いたわたしの声もきっと彼には聞こえていない。
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‥(プロフ) - mm.さん» ありがとうございます。楽しんでいただけてとってもうれしいです＊ (2021年4月29日 18時) (
レス) id: 2908e82d36 (このIDを非表示/違反報告)
mm. - 久しぶりにこころが震えました。他の作品とはまた違って私が求めていた世界観。最高です。続き楽しみにしてます。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 44e01e6971 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mam | 作成日時：2021年1月26日 20時
