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窓際の1番前の席に座る。1番前の席だけど外をぼんやり眺めていられるこの席は意外とお気に入りだった。学級日誌を開いて昨日のページを確認してから、青いペンを取り出す。
さらさらと紙の上を滑るボールペンの音と朝部活の様々な音が校舎内を巡る。さっき拭った汗がまた顔を出してワイシャツの胸元に滑り落ちていく。しっとり肌に張り付く肌着がたまらなくうざったい。
｢ねぇ、Aさん｣
｢なに？｣
｢Aさんって学校、すき？｣
｢うーん、あんまり｣
嘘、本当は大嫌い。
なんでもかんでも青春で片付ける同級生が嫌い。
クラスの1部の奴が悪いだけなのに理不尽にクラス全体を叱りつける先生が嫌い。
すべて校則で自由を縛る学校が嫌い。
青春なんかいらない、早く自分の力でお金を稼げる大人になりたい。
そんな冷めてる答え、彼が聞いたらどう思うのだろうか。
｢松田くんは？｣
｢元太でいいのに｣
｢呼び捨て、苦手なの｣
｢じゃあ元太くんでいいよ｣
頑なに名前で呼ばれたいようで、なかなか折れてくれなかったからじゃあ元太くん、と呼び直したら突然わたしの目の前に元太くんが現れた。すこぶる嬉しそうな顔がわたしを見つめていた。何も言えずに次の言葉を待つ沈黙がすこし続く。
｢ねえ、A
学校一緒にサボろうよ｣
｢・・・え、｣
先程とは変わって何か企んでる表情。学校、好きじゃないんでしょ？って後押しされたら断れないじゃんね。色んなことが頭に浮かんだけど、多分元太くんは私が断れないってわかって言ってるんだろうな、とぼんやり思いながらおもむろに頭を縦に振った。
｢よしっ、じゃあ決まり！行こう｣
ペンを握っていた手を取られて世界がぐらりと歪んだ。慌てて空いてた方の手でスクールバッグを掴んで勝手に流れていく景色と今のわたしの状況を整理する。彼に手を取られて長い廊下を走る。時折登校してきた同級生とすれ違う。頬を切る風は生温くて、首や項から汗が流れていく。
｢A、いそいで！｣
｢っえ、元太くん、！｣
引っ張られる手は固く繋がれている。なんだかそれがたまらなく嬉しくって、大きな背中を見つめながら勝手に前に進む足が絡まらないように、懸命に走ることにした。
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‥(プロフ) - mm.さん» ありがとうございます。楽しんでいただけてとってもうれしいです＊ (2021年4月29日 18時) (
レス) id: 2908e82d36 (このIDを非表示/違反報告)
mm. - 久しぶりにこころが震えました。他の作品とはまた違って私が求めていた世界観。最高です。続き楽しみにしてます。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 44e01e6971 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mam | 作成日時：2021年1月26日 20時
