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時が経って気付いたことだけど、その時の先輩の目はわたしと先輩の最後を物語っていたんだと思う。だいすきだった放課後、美術室のあの時間はもう戻ってこないこと。何気なく過ぎていく毎日に、生まれた恋心はどこにいってしまうのだろうか。
あの日を境に先輩は部活に来なくなった。生憎連絡先を交換していなかったから、それ以来先輩と会話することはない。それでも時折先輩と校舎内ですれ違っている気がする。尾を引かれるように振り返ってみてもあの甘ったるいミルクティーの匂いはしない。記憶に取り残されているのはわたしだけみたいだ。
今日も、放課後にひとり美術室で籠っている。いつもならテスト勉強の対策をしたりSNSに浸ったりしてるけど今日は違う。ごった返す埃かぶりのキャンバスの中からあの日のキャンバスを引っ張り出した。宮近先輩が愛おしげに見つめていたあのキャンバス。木製のイーゼルに立てかけてあの日と同じように座り込んで見つめてみた。
見れば見る度現実味があって、恐ろしい。顎まで伸びた髪と、全体的に丸みを帯びた目や鼻、微妙に左に歪む口元。よく見れば左と右で二重幅が違うようで、それもまたリアリティがあった。そのリアリティさでわたしはこの人が先輩の好きな人なんだと一瞬にして悟る。これはその人の自画像だろう。塗り重ねられた絵の具は油彩じゃなくて、アクリルだった。ふつふつと湧き上がる感情は最悪で
「こんなの、」
この人がいなければ、わたしは今頃先輩と
近くにあった硝子のペン立てからパレットナイフを握って突き立てようと振り上げる。そこまできて、わたしは脱力する。へなへなとしゃがみ込んだ衝撃で横に置いておいた温いミルクティーが倒れて零れた。からん、と虚しく音を立てて転がるナイフの刃はわたしの方を向いていた。
苦しかった
過去に囚われたままの先輩を救い出せる力がわたしにあれば、先輩は前を向けただろうか。
こうしてわたしも過去に囚われる。
赤く滲む夕暮れが美術室を不気味に照らす。
部室中に広がるミルクティーは、弱いわたしをだめにする匂いだ。
そして、わたしの大嫌いな匂い
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Autumn
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‥(プロフ) - mm.さん» ありがとうございます。楽しんでいただけてとってもうれしいです＊ (2021年4月29日 18時) (
レス) id: 2908e82d36 (このIDを非表示/違反報告)
mm. - 久しぶりにこころが震えました。他の作品とはまた違って私が求めていた世界観。最高です。続き楽しみにしてます。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 44e01e6971 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mam | 作成日時：2021年1月26日 20時
