夏と松田元太 ページ2
summeR
＊学生設定
じんわりと首に滲む汗を拭って、校舎の２階に上がる。足を上げる度に揺れるポニーテールも鬱陶しくなるこの夏は嫌いだ。しかも、運悪く席順で回ってきた日直当番のおかげで嫌いな学校にクラスの誰よりも早くいなくてはならない。そんな制度、いらない。
イライラと永遠に垂れ流すことのできてしまいそうな文句と熱を帯びた外気をまとって、扉の締まりきった教室の取っ手を握る。ひやりとした感覚が気持ちよくて思わずため息をついてしまう。もう考えるのはやめよう、わたしは気持ちを入れ替えて扉を開けようとすれば、教室内に人がいることに気が付いた。
窓際、後ろから2番目。頬杖ついて外を眺める男の子。一際淡い金色の髪がわずかに靡いている。
人は普段目にしないものを見ると、何も言えなくなってしまうものだ。時が止まったみたい、そこだけが絵画として切り抜かれたみたい、ヘンな例えばかりが頭に浮かんでは、目の前の景色にかき消されていく。扉の立て付けは最悪で酷い音がすることも忘れていたから、わたしが扉に触れた時点で彼はこちらを振り返った。
｢あ、おはよ Aさん｣
｢…お、はよ｣
朝の挨拶、元気が良いのは良いことだけど、その髪色。今どき髪色でグチグチ言うこの学校の先生もどうかしてると思うけど、流石にこれはマズイのではないか。カラカラの喉を駆使してようやく話しかける。
｢松田くん、髪色、 ｣
｢うん、変えたの。
どう、似合ってる？｣
コロコロと変わる表情はまるで万華鏡を彷彿とさせて面白い。さっきまでは湿った憂いを帯びたような表情してたくせに今は主人に媚び売る仔犬みたい。
｢にあってるよ、とっても｣
｢ほんと！ よかったぁ、！｣
ほら、また表情を変えて。金色の髪の束を指先でくるくると摘む。子供っぽい感じもクラスの女子から人気で、松田くんはいつもクラスの真ん中でわたしは端から彼を傍観することしかできない。誰にでも優しい彼と過ごせたらどれだけ嫌いな学校がすきになるのだろうか。こんなわたしだって理想ぐらい高く持ちたい。
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‥(プロフ) - mm.さん» ありがとうございます。楽しんでいただけてとってもうれしいです＊ (2021年4月29日 18時) (
レス) id: 2908e82d36 (このIDを非表示/違反報告)
mm. - 久しぶりにこころが震えました。他の作品とはまた違って私が求めていた世界観。最高です。続き楽しみにしてます。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 44e01e6971 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mam | 作成日時：2021年1月26日 20時
