白黄 ページ5
青色透明
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｢矢花さ、愛って何色だと思う？｣
｢なんすか いきなり｣
ベッドの上で足をばたつかせて、スマホの液晶に指を滑らせる嶺亜くんが突然応答に困る質問を投げかけてくるから驚いた。普段こんな哲学的なことを考えるって感じでもないから様子を伺ってみるけれど特に何の問題もなさそうだった。
愛の色か、と考えてみる。大抵愛の色と言えば真っ赤に燃える炎を連想して赤とか、それに近いピンクとかそんな感じを想像するだろう。自分も真っ先に赤色が浮かんだ。もしかして心理テストの類なのではないかと疑うけれどそれ以外に思い浮かぶものがないからそのまま口にする。
｢赤、ですかね｣
｢ふーん、じゃあ恋は？｣
｢恋？｣
｢何色だと思う？｣
今度は恋。また難しい質問が来て内心少しだけ面倒だと思いながらも、また想像する。恋の次は愛、という誰にでも思い付きそうな安価な考えの基、恋の色はピンクではないかと予想した。
｢ふぅん｣
｢え、 オチないんすか｣
なんだか人肌が恋しくなって、嶺亜くんが寝転がっているベッドに乗り上がる。二人分の重みで軋むベッド、シーツに移った彼の温もりを肌で感じて安堵感を得た。スマホをテーブルに置いて手の空いた嶺亜くんを軽く押し倒す。驚いた表情は一瞬だけですぐに緩んだ真っ白な頬にひとつキスをした。
｢俺はね、透明な青かなぁ｣
｢青色？珍しいですね｣
｢恋は不透明な青、濁って奥が、みえないの｣
話している最中にも首、耳、額、睫毛、様々なところに顔を寄せては唇を押し付けた。恋と愛を青に喩える嶺亜くんは珍しさと共に一種の尊さを感じる。魅力的な何かが彼にはある、そう信じてならなかった。
｢恋が愛になったとき
それは濁りが消えて綺麗な青色透明に、って 、こら 、｣
Tシャツの裾を捲って程よく筋肉のついた腹にキスを侵食させれば、身を捩って逃げようとした。逃がしたくないと言わんばかりに腰を掴んで、上半身をじっくりと愛撫していく。嶺亜くんの口からは甘い息が溢れて声を抑えるために上げられた腕を下ろさせて、互いの指先を固く強く絡ませた。
｢やばな、まって っあ、 ｣
濁りのある貴方のその瞳が、いつか透明になりますように
この行為が必ずしも愛に繋がるとは言えないけれど、いつかふたりで見た青色透明に憧れて、今日も嶺亜くんの濡れた唇に熱いキスを落とす
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作者名：細魚 | 作成日時：2021年6月27日 0時
