ブルーハワイと侍 (ページ1)

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紫緑＋赤ページ1

プールサイドアンドループ

:ti

雑誌撮影の休憩中、思い立って外に出た。白を基調とした式場とは打って変わって日が落ち夜になった外は案外心地が良かった。宛もなくウロウロとしていれば、偶然見つけた本髙の後ろ姿。右手が不自然に曲がってるからきっとスマホでもいじってるのだろうか。俺がいることに気付きもしない。むくむくと湧き上がる悪戯心を抑えられず、無防備なその背中を押したくなる。風もないのにゆらゆらと揺れ動く水面は鮮やかにライトアップされて酷く眩しい。
刺激される好奇心と期待に心拍数が上がる。本髙は一体どんな反応をして、どんな表情で俺の顔を見るだろうか？
バレないように、ゆっくりと近づいて、欲のままにその背中を押した。もちろん、落ちないように黒の背広を掴んだ

はずだった。

｢っえ、｣
｢あっ｣

人間は突発的に、自他者が危険な状態に陥ると物事がスローモーションになるらしい。ゆっくり俺の手をするりと抜けて、背中が遠のいていく。嘘だ、確かに俺は本髙の背中を掴んだはずなのに。振り返った本髙の顔は、全部は見えなかったけれど、酷く驚いていた。大きく見開かれた瞳には動揺した俺の姿がしっかりと映っていたような気がした。
ザブンとプールの水面に叩きつけられる本髙。飛び散った飛沫が俺の頬と衣装のタキシードを点々と濡らす。そのプールが浅ければきっとすぐに顔を出して怒鳴られて呆れたようにどうしようもない顔で笑われるだけだったのに、本髙は浮かび上がってこない。ばしゃばしゃ、ぶくぶく、水の底で藻掻く彼の姿が見える。事の重大さに気付いてサッと血の気が引いていく。身体中が強ばってしまった今、勝算なく飛び込んだとしても確実に道連れになってふたり一緒に溺れる。喉が引き攣って声さえも出ない、確かに本髙は俺に手を伸ばしている

｢、だれか｣

震える声の隣を何かが通り過ぎる。バシャンと大きな飛沫がまた俺を濡らした。薄い水色の奥でふたつの影が重なって浮き上がってくる。ようやく現れた何かの正体は、琳寧だった。引き上げられた本髙は小刻みに震え苦しそうな呼吸を繰り返すばかりで俺の方を見ることは一度もない。見ていなくてよかった、きっと今の俺は、相当情けない顔をしている。

｢大光｣

こんなに冷たい声出すんだ、琳寧って。鋭い瞳が俺の心臓を一突きして、その場に立って居られなくなったからゆっくりしゃがみ込む。そんなつもり無かったのに、俺はただ、本髙を