monologue Ⅱ (ページ31)

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少し腕を上げ、時計を確認する。

高校入学の時に流星が買ってくれたこの腕時計は
一番のお気に入りで、大切な宝物だ。

そして、今度は携帯を見る。新着のものはない。

休日ともなれば、忙しなく人が行き交う場所で
かれこれ一時間くらい立ち尽くしているだろうか…

約束の時間から１５分過ぎた頃に " 帰っていい？ " と
メッセージを送れば、その１５分後に返信が来た。

人をこの場に来させておいて寝坊したその男は
一時間経った今、やっと走って姿を現した。

紫「ごめん！ほんっっとにごめん！
昨日考え込んでたら、なかなか寝れんくて… 」

『あとでジュース奢って、…新作のやつ』

なかなか寝れなくて、と尻すぼみに零す声に
怒る気にもなれなくて新作のジュースで手を打つ。

本当は昨日、それは顕嵐と飲んだのだけれど。

こんな時の上手い言葉が見つからないのは
長い時間、人との関わりを断ってきた弊害だろうか。

馴染みのない路線へ乗り込み、何度か乗り換える。

窓から見える景色は見覚えなんてなくて。
長閑で温かみがあるその景色は嫌いじゃなかった。

隣を見れば、
いつにも増して優しい顔をしている紫耀の姿。

『これって、どこ向かってるの？』

紫「 ……俺の大切な場所」

窓の外に目を向けたまま言われた言葉には
温かさと優しさが苦しいほど詰まっていた。

目的地はきっと、そんな場所なんだろう。

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