波打ち際の外伝【赤】 (ページ3)

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《ピコンッ》

大毅に送った『おやすみ』に
既読のマークが付いたのを確認したと同時に、

今度は別の人物からのメッセージ。

『濱田崇裕: 今日めっちゃ仕事遅なったわ～。いま風呂出たとこ！電話できる？』

送り主は、私の愛しの人だった。

待ちわびていた相手からの連絡に
居ても立っても居られず、

すぐに通話ボタンを押す。

《～♪》

しばらく呼び出し音を聴きながら待っていると、

『もしもーし』

メロディが途切れて、
電話の向こうから大好きな声がした。

「もしもし。お疲れ様です、先生」

『おう、ありがとさん』

電話の向こうの彼、
濱田崇裕さんは、高校時代の先生。

そして、約2年間の片思いを経て、
卒業と同時にお付き合いを始めた恋人でもある。

『A、今なにしてたん？』

「んー？めっちゃ暇やったから大毅に電話掛けてた」

『あぁ、重岡くん元気なん？』

「元気元気！なんか今日もサークルでアホなことして笑われたって嬉しそうに話してましたわ」

『相変わらずやな～アイツも。俺も今日、職員室で淳太の彼女の話イジってな』

「え！中間先生彼女おるんですか！？」

『そうそう。今度聞かせたるわ』

こんな他愛もないことを、

お互いの都合のいい夜は電話で話す。

『A、明日1限やろ？週末会えるし、そろそろ切ろうなぁ』

15分くらい話して、
先生がいつものように言った。

「うん、先生もお仕事やしね」

『そしたら、また連絡するわ』

「はーい、お願いします」

『おやすみ』

「おやすみなさい」

最後に私の「おやすみなさい」が届いたタイミングで

通話が切れる。

ほんまに他愛もないことやけど
この時間がすごく幸せで。

週末の楽しみを思い描いて、
幸せな気持ちのままベッドに潜った。