波打ち際の外伝【赤】 (ページ12)

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濱田「そっか…重岡くん帰ってきてんの？」

「え？大毅？」

先生の口から出てくるのは珍しい名前。

濱田「帰省してきてるん？」

「うん、先週から帰ってきてて、ほんまうるさいんですよ！毎日毎日。バイト先にまで遊びに来るし」

大毅の愚痴をこぼすと、
先生独特の笑い声を上げて笑う。

濱田「元気そうで良かった。重岡くんに感謝やな」

「え？」

濱田「や、こっちの話……はい、着きましたよお嬢さん」

外を見ると、私の家の前。

「ありがとうございました。会えて嬉しかったです」

濱田「うん、俺も…A、」

シートベルトを外した私を
ちょいちょい、と手招きする。

「……」
濱田「……」

ほんの一瞬だけ、

触れるだけのキスをして、
またしばしのお別れ。

濱田「おやすみ、A。また連絡するな」

「はい、おやすみなさい…待ってます」

車から降りてドアを閉め、
発進した車の後ろ姿を見つめる。

つい今まで隣にあった香りと
唇に残る熱に

これから始まる会えない時間を重ねて

思わず涙が滲んだ。