波打ち際の外伝【赤】 (ページ11)

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カーステレオから
CMでよく聞く洋楽が小さく流れてくる。

「あ、この曲知ってる」

会話の途中でそう言うと、

濱田「最近CMで流れてるもんなぁ」

前を向いてハンドルを握ったまま
先生が優しく答えた。

なかなか会えない私たちだけど、

最近は先生の仕事終わりに
お互いの都合が合えば
こうして短時間ドライブに連れてってくれる。

とは言っても、
私のバイトがあったり、
先生もお仕事終わるの遅かったりで

最後に会ってから2週間ほどが経っていた。

「先生、ありがとう。疲れてるのに」

濱田「いや、会える時に会っとかんと、次いつなるか分からんからなぁ」

なんだか申し訳なさそうに笑う顔に

少し、胸が痛む。

「バイト、減らそかな」

小さく呟けば、

濱田「嬉しいけど、俺のため言うんやったらあかんよ。大学生のうちは、バイトしてお金貯めて、そんでいっぱい遊ばな」

「…うん、そやね」

先生には、
大学生の私はどういう風に見えてんのかな。

大人？子ども？

それとも……生徒？

会えない日が続くと
時々そんな不安に駆られて、

『私のこと好き？』なんて、
それこそ子供っぽいこと聞きたくなる。

「……」

聞いたらきっと先生は
優しく笑いながら、
『好きやで』って応えてくれるんやろうけど。

やっぱり子どもって思われたくなくて。

少しでも近づきたくて。

濱田「A？どした？」

急に黙った私を不思議に思って
先生が問いかけてくる。

「……ううん、ちょっとぼーっとしてた」

また、何も言えない。

胸の奥の方が

ズン、と重くなったのを感じた。