うぎょるぎゅ

37.異変(KH) ページ37

沈黙のあと、
マンションの前に着いてしまった。
何か言おうとするA。

・・明らかに、困ってるみたいだ。

ああ。
これで気まずくなったら残念すぎる。
情けない気分で何かフォローになる言葉を言おうとすると、

「オッパ、そうじゃなくて。私も。」

・・・・！！

「・・・・・私も演技ではないから。
その・・変な意味じゃなくて。オッパに、近付きたいと、思ってる・・。」

・・期待しちゃいそうな発言だけれど。
他意はないのか？

いや、もうこの際なんでもいい。

拒絶はされなかった。
それだけで。
僕の発言が明らかにマイナスではなかったことに、心から安堵した。
彼女と僕の距離は今、少しでも近付いただろうか。

ふと見ると、なんだか緊張してる？
泣きそうな彼女。
愛しくなり、思わずそっと抱きしめる。

KH「・・ありがとう。」

心から自然と出た言葉。

しばらくして、体をそっと離すと、
顔を赤くした彼女が目も合わさずに車を降りた。

気まずそうにするのに、きちんと挨拶をしてる。
そういうところも本当に好きだ。

マンションのエントランスに入っていく彼女を幸せな気分でじっと見ていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・あれ。
なんだろう、今の。

物陰からすっと出てきた黒っぽい服を着た人が、
彼女について行ったように見えた。

エントランスの中だし、よく見えない。
住人か？


・・・なんだか胸騒ぎがする。
もうほとんど真夜中と言っていいような時間だ。

こんな時間に、誰かが、しかも待ってたように入口に居てるなんて。


さっきまでのドキドキとは意味の違う不穏な胸の鼓動を感じて、
僕は思わず車から降りた。


エントランスは暗証番号も必要ないただの扉だった。
なんだこれ、セキュリティが甘い。


っていうか、Aの部屋は何階にあるんだ？
エレベーターを確認すると、4階で止まってる。

取り越し苦労ならいい。
それでも、何かあったらと思うと。

僕はエレベーターが降りてくるのも待てず、階段を駆け上がった。

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