うぎょるぎゅ

35.二人きり(KH) ページ35

帰り際、彼女のマネージャーが居ないことに気付いた。
声をかけると、今日は一人だと言う。

送るからと言って、内心ドキドキしながら彼女を駐車場に連れてきた。

助手席を開けても、なぜだか躊躇してなかなか乗り込まない彼女。

そこではっと気付く。

そうだった。
今日は自分の車で来たから、当然二人きりだ。
むしろ今日に限って自力で来た自分を褒めてあげたい心境の僕だったけれど、
Aはマネヒョンがいると思ってたみたい。

また、「彼氏」のことが頭をよぎる。
迷惑だったか？
・・なんか敬語になってるし。
警戒されてる？


でも、ここは少し強引だけれど、送らせて？ともう一度念を押してみた。
もう遅いし、こんな時間から一人で帰るなんてありえない。

・・・・・・・・・・・・

車内はなんだか微妙な空気。
僕は胸の鼓動が大きくて、でもうれしくて、なんだか緊張していた。

KH「・・あのさ。僕もだけど、Aもなんでそんな微妙な空気出してるの？(笑)」
「え。だってなんだか。緊張して。」

KH「うん。不思議なかんじ。さっきまで二人でごはん食べてたのに、二人きりになるのは初めてだし。」

「うん。なんかね。番組じゃないオッパをオッパと呼んでいいのかすら悩む(笑)」

KH「何で？いいよ、もちろん。」

・・・なんでそんな寂しいこと言うの。
近付いたと思ったのは僕だけだった？

「んー、でもなんだかね、距離がどのくらいなのか、わかりにくくて。」

確かに。そういう気持ちもわかる。
・・・まだまだ彼女の気持ちは遠そうだ。

信号が赤に変わった。
停車してすぐ、僕は彼女の方を向いて、きちんと目を見て切り出した。

KH「・・・A。よく聞いて。」
少し驚いた表情の彼女。

KH「あれは番組だけれど、・・僕はほとんど演技はしてない。」

Aはどうなんだろう。すべて演技なんだろうか。
不安になりつつも、自分の気持ちだけはちゃんと伝えたいと思った。

この先二人きりになれることなんかそう何度もないだろう。
ここでちゃんと伝えないと、きっと後悔する。
それだけは嫌だ。

KH「僕は役者じゃないし・・。Aに見せる顔は全部リアルだと思ってくれていい。僕とAの間にあるのは、番組の中と同じ距離だと僕は思ってる。」

何も言わず、僕を見つめる彼女。
ああ、触れたい。

でも信号が変わる。

・・紳士に振る舞わないと。
嫌われたく、ない。

早鐘を打つ胸に気付かれないよう、
何事もなかったように車を発進させた。

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