55話 ページ24
最終日の朝
2ヶ月弱ですっかり着慣れた自分の服に袖を通す
少しほつれたドレスの裾は、私達の努力の証
誇らしく胸を張り見据えた鏡の中の自分は、どこか満足そうな顔をしていた
後悔はない
私はやり切った
最後の花道へ向かい足を運ぶ
最良の結果を マスターに
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一回一回を全力でやり切ると、1日なんてあっという間に過ぎて行く
私達との別れを惜しむ人間達の声など、時間は悟ってはくれない
このまま無事に終わりを迎えると、リクルーターの誰もが思っていた事だろう
けれど最後のセイリング中、それは起こった
「おい、みんなどこだ？」
ゲストに挨拶をしている最中、レストランの真ん中あたりでジョーが何かを呟いたのが聞こえる
最初は何かまた意地悪しているのだろうと気に留めなかった
だけど
「A…！アップルポイズン…！みんなどこだ！」
普段とは違う少し焦りを帯びた彼の声に、ざわりと胸が嫌な騒ぎ方をする
サインを書く手を止めそちらに向けた目が捉えたのは、魔力の枯渇しかけた彼の姿
「俺を1人にしないでくれ…」
演出だとでも思っているのだろうか
人間達は誰も彼の言葉を間に受けない
それは仕方ない事だろう、彼らは魔力を感じないのだから
だけれど
それが無性に腹立たしい
気付くと、私の足は彼に向かって駆け出していた
『ジョー！』
「…Aか…？
…だんだん目が見えなくなってきた…限界だ…」
明らかに弱った彼の姿にじわりと目頭が熱くなる
自分の体の限界より、彼の限界を見る事のほうが何倍も辛く感じた
綻びの見える彼の手を取りそっと撫でる
こんな時、私達ヴィランズは誰に願えばいいんだろう
神？マスター？自分？
わからない
けれど、何もしないで見ているなんて出来るわけない
今度は、私が助ける番
あと少しでいいの
一緒に、やり遂げさせて
そっとジョーの瞼を手で覆い、魔力を注ぐ
数秒してから手を離すと、先程まで焦点の合ってなかった瞳は元の彼の瞳へと戻っていた
「…悪い、心配かけたか」
『…後でちゃんとお礼貰うからね』
「はっ、ちゃっかりしてやがる
…ありがとな、A」
そう言って私の頭を撫でる彼には、きっと今の言葉が悲しさを隠すための憎まれ口だとバレていたんだろう
また熱くなった目頭を抑えるように唇を噛みしめる
最後の最後で、ようやくあなたの役に立てたかな
リクルーティングが終了した
人間達に、一時の悪夢を焼き付けて
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うぐいす(プロフ) - ツクモさん» ツクモ様コメントありがとうございます！お返事遅くなり申し訳ありません…！！想像以上に続編希望のお声をいただき、始動させていただきました！よろしければご覧くださいませ！ (2018年12月3日 15時) (
レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
ツクモ(プロフ) - 続編を希望です!!とても、いい話でした！ (2018年11月20日 1時) (レス) id: eb3706892f (このIDを非表示/違反報告)
うぐいす(プロフ) - にゃおさん» にゃお様コメントありがとうございます！楽しんでいただけて嬉しいです！続編のご希望も幸せです…！！にゃお様のご意見含めて検討させていただいてます！ (2018年11月17日 21時) (レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
うぐいす(プロフ) - ステラさん» ステラ様コメントありがとうございます！私の夢を吐き出したこの作品で喜んでいただけたなら幸いです…！！ (2018年11月17日 21時) (レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
うぐいす(プロフ) - くるるさん» くるちゃんコメントありがとう…！こちらこそいつも読んでくれた上にコメントまでくれて幸せでした！ありがとうございます！！ (2018年11月17日 21時) (レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うぐいす | 作成日時：2018年10月22日 13時
