54話 ページ23
「当たり前なこと聞くんじゃねぇ」
拍子抜けするくらい優しい声に目を丸くする
彼の腕が私の体を捕まえ、その中に閉じ込めた
頬をするりと撫でるその手がどうしようもなく愛しい
「お前が離せって言っても離してやらねぇって、あの時言ったろ」
『ジョー…』
「どんな姿でも、お前はお前だ
…不安になるのもわかってる、所詮俺達は違う生き物だからなァ
だから」
額に、頬に、瞼に、唇に
キスが落とされる
「不安ならその度に、俺に言え
何度だって伝えてやるよ」
『…あなた、私に随分甘いのね…？』
「はっ、仕方ねぇだろ…惚れた弱みだ
…愛してる」
『…ありがとう、ジョー…愛してるわ』
貴方を愛せて、とても幸せよ
終わりが近付く 足音がする
だけどもう 怖くはない
貴方と一緒なら
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「Aさん…！サインください！」
『ペン貸しなさい…ちょっと、このページアリエルいるじゃない
塗り潰してあげるわ』
「Aさん！写真一緒に撮らせてください！」
『一枚だけよ？ほらもっとくっつきなさいよ、写らないじゃない』
今日を入れてあと2日で、この仕事は終わりを迎える
観に来ている人間達の中には、涙を流す者もいた
悪役との別れを惜しむなんて…変な生き物
だけどそれを心のどこかで嬉しいと感じている自分がいる
ふと、ヴェールがお誕生日のシールを貼ったゲストに歌を歌っているのを見つけた
…驚かせてみようかな
後ろからそっと近付き、少し低めの歌声で混ざる
「『Happy birthday to you』」
最後まで歌い切ると、これでもかというくらいの拍手が部屋を包み込んだ
「Aさん…！」
『ごめんなさい、邪魔したかしら』
「いいえ、そんなことありませんわ！
Aさんとデュエットできるなんて…ステキな歌声をお持ちですのね」
『ヴェールにはかなわないわ』
嬉しそうに笑う彼女はとても可愛らしい
海のものはよく歌を歌うが、友達のいなかった私が歌う事は少なかった
1人で歌うと、どうしても悲しい歌ばかりが口から溢れるから
寂しさに拍車がかかってしまう気がして…
数年ぶりに誰かと歌うのは、心が癒されるようだった
「Aさん」
ヴェールが真剣な眼差しを向ける
「またいつか、お会いできた時は…わたくしと一緒に歌っていただけますか？」
『…もちろん』
明日もわからない悪役の、未来の約束
叶うかなんてわからないけれど
その約束自体が、私の希望
明日は 最終日
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うぐいす(プロフ) - ツクモさん» ツクモ様コメントありがとうございます！お返事遅くなり申し訳ありません…！！想像以上に続編希望のお声をいただき、始動させていただきました！よろしければご覧くださいませ！ (2018年12月3日 15時) (
レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
ツクモ(プロフ) - 続編を希望です!!とても、いい話でした！ (2018年11月20日 1時) (レス) id: eb3706892f (このIDを非表示/違反報告)
うぐいす(プロフ) - にゃおさん» にゃお様コメントありがとうございます！楽しんでいただけて嬉しいです！続編のご希望も幸せです…！！にゃお様のご意見含めて検討させていただいてます！ (2018年11月17日 21時) (レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
うぐいす(プロフ) - ステラさん» ステラ様コメントありがとうございます！私の夢を吐き出したこの作品で喜んでいただけたなら幸いです…！！ (2018年11月17日 21時) (レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
うぐいす(プロフ) - くるるさん» くるちゃんコメントありがとう…！こちらこそいつも読んでくれた上にコメントまでくれて幸せでした！ありがとうございます！！ (2018年11月17日 21時) (レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うぐいす | 作成日時：2018年10月22日 13時
