48話 ページ17
言ってしまった
伝えてしまった
自分の意思とは関係なく流れ出る涙を止める術を、私は持たない
ただあるのは激しい後悔の念だけ
彼の顔が見れず下を向くと、更に涙が溢れてくる
失望しただろうか
呆れられただろうか
怖くて、たまらない
『ごめん、なさい…』
「…なんで謝る」
『だって…私達は、ヴィランズだから』
ヴィランズに、悪に愛は必要ない
むしろ忌むべき感情
だってそうでしょう？
くだらない真実の愛に敗れる悪の物語は、数え切れないくらい多い
そんな“愛”を、私は彼に抱いてしまった
『失望したわよね…私が、こんな…
お姫様みたいな、愛を、貴方に…』
「…してねーよ」
『嘘よ…貴方はずっとヴィランズとして生きてて…
愛なんて、嫌いでしょう？』
自虐の笑みが顔に浮かぶ
『私のことなんて、嫌いになったでしょう…？』
だん！
エイトフットの手が、私の手首を掴んで壁に縫い付ける
驚きで思わず顔を上げると、彼の瞳に宿った怒りが私を見下ろしていた
「俺の感情を…！！勝手に決めんじゃねぇ！！」
普段聞いたことのない荒げた声は、怒りと、悲しみを含んでいるように聞こえた
彼から目が離せない
なんで、貴方が
そんなに辛そうな顔をしているの？
わからない
なんで
「失望なんてしてやるかよ
お前が離せって言っても離してやらねェ
俺を愛したって言うんだったら、それくらいの覚悟を持て
…簡単に、俺を手放すんじゃねェ」
その言い方じゃあ、まるで
「ようやく俺も覚悟決めれたっつーのに、勝手に諦めてんじゃねーよ」
こつり
いつかの悪夢の中のように、エイトフットの額と私の額が重なる
じんわりと伝わる熱が心地良い
また、涙が溢れる
「A、お前を愛してる」
心の底から欲しかった言葉
絶対に手に入らないと諦めていた言葉
ぽっかりと胸に空いていた穴が埋まったような気がした
さっきまでとは違う涙が溢れて止まらない
「…なぁ、キスしていいか」
『…そんなこと、今更聞くの…？』
「はっ…それもそーか」
目を閉じると唇がそっと重なる
2度目のキスは、彼らしくない優しい口付け
1度目よりも長く、幸せなセカンドキス
唇が離れ、また重なる
私の今までの不安が、一つ、また一つと消えていく
『…エイトフット』
「ジョーだ」
『え…？』
「いい加減、名前で呼べ」
『…ジョー
大好きよ、愛してる』
「…あぁ」
また唇が、重なった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 213人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うぐいす(プロフ) - ツクモさん» ツクモ様コメントありがとうございます！お返事遅くなり申し訳ありません…！！想像以上に続編希望のお声をいただき、始動させていただきました！よろしければご覧くださいませ！ (2018年12月3日 15時) (
レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
ツクモ(プロフ) - 続編を希望です!!とても、いい話でした！ (2018年11月20日 1時) (レス) id: eb3706892f (このIDを非表示/違反報告)
うぐいす(プロフ) - にゃおさん» にゃお様コメントありがとうございます！楽しんでいただけて嬉しいです！続編のご希望も幸せです…！！にゃお様のご意見含めて検討させていただいてます！ (2018年11月17日 21時) (レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
うぐいす(プロフ) - ステラさん» ステラ様コメントありがとうございます！私の夢を吐き出したこの作品で喜んでいただけたなら幸いです…！！ (2018年11月17日 21時) (レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
うぐいす(プロフ) - くるるさん» くるちゃんコメントありがとう…！こちらこそいつも読んでくれた上にコメントまでくれて幸せでした！ありがとうございます！！ (2018年11月17日 21時) (レス) id: 0d9abb39c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うぐいす | 作成日時：2018年10月22日 13時
