一匹の悪役の話 (ページ8)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:80,139 hit

5話ページ8

…

『…んー……まぶし…』

いつもは感じない眩しさで目が覚める
朝は弱いのだけれど、見慣れない風景と感覚のせいで普段より早く意識が覚醒した

そうだった、人間の姿にされたんだっけ

眩しさに目を細めながら自分のヒレ…今は手になった場所を眺める
自分の体なのに違和感しかない

『…慣れないなぁ…』

昨日自己紹介が終わった後、再びミスターに抱えられ私の部屋になる場所へ連れていかれた
今日は寝なさい、とベッドに寝かされ、気づいたら寝てしまったのだ
……魔法を使われたに違いない

『…とにかく、起きなきゃ…』

今は何時なんだろう
確認しようにも、この部屋に時計は見当たらない
なんて不便な
とにかく行動しようとベッドから出るが、途端にドサッ！と転んでしまった

そうだった！歩けない！

『やだ…！どうしよう…』

この部屋はたしか1番端っこだ
昨日の広間からは1番遠く、なおかつ部屋自体が大きいため声を張り上げて誰かを呼べるかどうかもわからない
昨日運んでくれたミスターが私を思い出してくれるか、仲間になる誰かが呼びに来てくれるのを待つしかない
だけどそれも朝になってしばらくしてからだろう、今が何時かわからない状態では、あとどれくらいこのまま待てばいいのかさっぱりだ

急に、知らない場所で慣れない体でひとりきり、という事実が私の不安をかき立てた

『だ、誰か…』

コンコン

「失礼、向かいの部屋のマルフィだが…なにやら大きな物音がしたね
怪我などはしてないかい？」

『！…マルフィさん…！た、助けてください！』

「…！失礼するよ！」

助かった…！
心細さでいっぱいだった私の目に、昨日初めて会った黒と紫の男性が映る
たったあれだけの物音で気付いてくれるなんて…
私の目には彼が救世主のように見えてきた

「どこか怪我でも？大丈夫かい？」

『ご、ごめんね…マルフィさんが来てくれて助かった…
実は私、歩けなくて…』

「…歩けない…あぁ！サメだったんだよね、君
それで昨日ミスターが抱き抱えてたのか」

『…その通りです…
だからあの、歩き方を教えてもらってもいいかな？』

へらっと苦笑いを浮かべる私を見て、ふむ…となにやら考えている彼
数秒後ににっこりとこちらに笑みを浮かべると、私に近付き

ひょいっ

『！？』

「wel wel…マミは随分と軽いんだね」

この展開デジャヴなんですけど！！
驚き固まる私をよそに、彼はにこにこ笑いながら廊下を出て歩き出した