一匹の悪役の話 (ページ5)

今日:6 hit、昨日:3 hit、合計:80,138 hit

2話ページ5

慣れた海の底から、日差しが差し込む水面付近まで浮上する
私の目には眩し過ぎて、思わず目をつぶった

？「やぁ、はじめまして」

弾むような、それでいてどこか怪しい男の声
閉じてしまった目をゆっくりと開けると、すぐそこの岩場の上に奇妙な男が立っていた

…人間はみんなこんなものを着ているのかしら

？「モルガナ様の手下、サメのマミ、で間違いないかな？」

『ええ…あなたが依頼者？』

「そうとも、私の名前はMr.V！以外お見知り置きを…」

礼儀正しくお辞儀をするMr.Vにつられて、私もぺこりと頭を下げる
すると、ふわりと体が不自然に上に浮き、岩の上に降ろされた
…息できるんだ…魔法のおかげかな…
サメが陸にあげられた姿はなんだかとても…マヌケだ

「それでは！貴女様を人間を魅了する姿へと変えさせていただきます！」

ミスターが杖を一振り
すると、体に光がまとわりつき、徐々に変化が現れた

触れたものを傷つけるサメ肌はつるつるとなめらかな人肌に
鋭く尖った牙は、少し鋭さを抑え
頭には黒くなめらかな長髪
体に纏うのは黒と、目と同じ黄色のマーメイドドレス
そして私のヒレはあの女と同じように…

『人の…脚…』

「おお…美しい！素材の良さがなければこうはならない！
やはりモルガナ様に声をかけた私の目は正しかったようだ」

お手を、と差し伸べられた手をつかみ脚に力を入れる
…入れたはずだ

『…あ、あれ…？』

「ふむ…やはりヒレとは勝手が違うか…」

『ご、ごめんなさい…』

「いやいや謝ることはない！だがしかし…これでは集合場所に行けないな…
ちょっと失礼」

『へ？』

ひょいっ

『ちょっ…！！！！！』

「とりあえず今は私が連れて行くとしよう！しっかり掴まっているように！」

ミスターに抱き上げられ体が宙に浮く
た、たしかに動けないけど…！！！

『教えて貰えば歩けますから…！！！』

「なにぶん時間がないものでね、なぁに！そこまで遠くないから大丈夫だ」

なにが大丈夫だっていうのよ！！！