一匹の悪役の話 (ページ33)

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28話ページ33

だんっ！！！

顔の横に衝撃が走る
つらくて閉じていた目をゆっくり開くと、視界に映ったのは荒い息を繰り返すずぶ濡れのエイトフット
私自身の涙でぼやけてるけど、間違いない

頭がぼんやりする

体に力が入らない

ここはどこだろう

さっきまで聞こえてた声はなんだろう

エイトフットは迎えに来たと言った
じゃあ…さっきまでの彼の声は？

わからない

頭がいたい

つかれた

もうなにもかんがえたくない

目の前で何かがぶつかり合う音がした
徐々に激しくなる音と、段々と強くなる血の匂い

また体の力が抜けていく
頭に誰かの声が響く

“また誰かを信じて裏切られたいのか”

“こいつもきっとお前を置いていくぞ”

やめて

言わないで

もうあんな思いしたくない
また絶望するくらいなら

もう眠らせてほしかった

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--------エイトフットside--------

戦力は俺の方が若干上
最初はそうだったはずだ

徐々に押されていることに気付いたのはついさっき
そして同じタイミングで、マミの魔力が減っていることに気付いた

こいつは、魔力を喰いながら戦ってやがる

魔力をどんどん消費していく俺と、常に補充しながら戦う悪夢
どちらが有利かなんて火を見るより明らかで

俺の体からは、ぼたぼたと血が垂れ始めていた

「っ、くそ」

効いてねーわけじゃねぇ
悪夢のほうにも無数の打撃の跡がある
だがやはり、魔力の差はでかい
どうにかして供給を断つか、早めに決着をつけるかしか勝つ手立てはない

そんな思考を読み取ったのか、にたにたと気色悪い笑みを浮かべた悪夢が口を開いた

「ムダだぜ、オレはそのオンナの負の感情をつよめ、ココロのスキマから魔力をうばってる
減る一方のオマエとはちがう！」

俺の肩を触手が貫き、耳障りな高笑いが空間に響く
ふらふらと8本の足がふらつき、マミの足元にへたり込む
情けねぇな
ふと、マミが俺を呼ぶのが聞こえた

『エイト、フット』

「マミ、あとちょっと待ってろ」

『…やだよ、うらぎられたく、ない』

「…あ？」

『…くるしい…やだ…こわい…
もう、ねむらせて』

酷く弱った、かすれた声
俺を怒鳴りつけた時のような威勢は全くなく、ただただ救いを求めて呟くこいつの声に、どうしようもない苛立ちが募る

楽になりてぇだと？

「ふざけんじゃねー」

それは、俺が許さねぇ