一匹の悪役の話 (ページ32)

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27話ページ32

-----エイトフットside-----

水はマミの背後から溢れ出てるように見えた
おそらくあそこに悪夢がいる
この水は救出の妨害をしてるつもりだろう
俺は海で慣れてるからいいが、他の3人は水に足をとられ困惑していた

そこに追い打ちをかけるように、黒い人型の“何か”が周囲を取り囲んでいるのを感じる
なかなかの数だ

「っ、聞いてないわよ水なんて…！」

「ハーデス、私達の周りとマミへの道を照らしてくれ、見失うわけにはいかない
ジャック！2人で応戦するぞ
エイトフットはマミの元に！水で自由に動けるのはお前だけだ」

「…おう、任せな」

実質2対多数だ
不安はあるが、こんなとこでやられるような奴らでもない
俺はマミの救出だけを考えればいい

下半身を元の姿に戻し、腰まで溜まった水に潜る
そのままハーデスの火を頼りに勢いよくマミに向かって泳ぎ出した

ずきり

「ｯ…！」

同時に酷い頭痛が襲いかかる
負の魔力とでもいうのだろうか、不愉快な何かが俺の頭に流れ込んでくるかのように感じた
気分の悪ぃそれは、マミに近付くにつれ強くなる

自然と息が上がり、疲労感も増していく
頭が割れるようにいてぇ
足も腕も鉛のように重い
目も霞んできた

だが

「だてにヴィランズやってねぇんだよ…！！！」

だん！！

勢いよく水面から顔を出し、マミの顔の横に手をついた

苦しそうに閉じていた瞼がゆっくりと開き、ぜぇぜぇと肩で息を繰り返す俺をとらえる
いつもの黄色い瞳は、涙でゆれていた

そんな目すんじゃねぇよ

「よう…迎えに、きてやったぜ」

『…エイト…フット…？』

「おー、俺だ」

頭痛のせいで息が整わねぇ
ひとまず鎖を外してやらねぇと、とタコ足で鎖を引っ張るが

…嘘だろ、びくともしねぇぞこれ

と、その時
マミの背後から何かが俺に襲いかかる
顔に当たる寸前で防ぐと、その黒い触手のようなものはぎりぎりと俺の顔を貫こうと力を込めてきた

同時に、マミの背後から顔を出したのはアップル達に襲いかかる黒い人型
同じ形をしているが、不愉快な魔力をこいつから感じる
本体だ、と悟った

「テメェが悪夢か」

「よくもまぁノコノコと…オレにくわれにキタんだろ？そのアシどかせヨ、くってやる」

「狭間にいた割には元気だなァ？死にかけって聞いたんだが」

にたり
不気味な笑みを浮かべ、マミの頭を掴む悪夢

「コイツの魔力はおいしかったゾ」

胸の内に怒りがこみ上げてくるのがわかった