一匹の悪役の話 (ページ4)

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1話ページ4

「マミ！どこだい！」

『ここにいます、モルガナ様』

氷漬けの洞窟
薄暗いその中にいるのは、一匹のサメと白髪の痩せ細った女

モルガナとその1番の手下、マミ

「あぁいたいた、どうだい、最近仕事は」

『え？えーっと…順調かと…』

あのモルガナ様の言葉に救われ、身を捧げてから早数年
私はすっかり“悪”に身を染め、モルガナ様の1番の手下とまで呼ばれるようになった

元々サメは海の嫌われ者
悪になると決めてから、慣れるまでにそう時間は必要なかった
心さえ決めてしまえばよかったのだ、体は生まれつき、悪側なのだから

「そうかい順調かい…なら、もう１つぐらい増えても問題ないだろうね」

『へ？あ、あの…モルガナ様、話がよく…』

「ほら、これを読みな」

モルガナ様は手に持っていた紙を広げ、私に読むように命じた
えーっと…

『リクルート…？』

なにやら聞きなれない言葉
紙の内容を読むと、ようするに今ヴィランズ界では人手が足りないと
だから手下を各マスターヴィランズごとに1人派遣し、人間達から見込みがありそうなものを選び、リクルートする
そのためモルガナ様のところからも1人派遣してほしいとのことだった

「地上での仕事ってことになる、あんたの姿はその依頼者がふさわしい姿にしてくれるだろうさ
アリエルみたいに…人間の姿にね」

『……モルガナ様、その名は』

「冗談さ、そんなに怖い顔するんじゃないよ」

『…失礼しました…』

「姉さんのとこからも1人行くらしくてね、エイトフットのジョーといったか
あいつは姉さんにすでに姿を変えられて先に行ったらしい」

…エイトフット
あの日以来、不必要に私を傷つけてきた彼をどうにも好きになれなかった
モルガナ様の使いでアースラ様に会いに行ったときなど顔を合わせる機会もあったが、まともに話したことなんてない
…うまくやれるのだろうか…

「不安かい？」

『…いえ、承知しました』

不安はある
あの姫様…アリエルなんかと同じ姿になること
慣れない陸での仕事
好きじゃない同僚
モルガナ様の元を離れること

それでも…
私を救ってくださったモルガナ様のため

『最上の結果をお持ち帰りします』

モルガナ様に見送られ、地上にむかった