一匹の悪役の話 (ページ3)

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誕生ページ3

冷たい水が肌を刺す

私を見つめる冷たい目は、しばらくするとにんまりと不気味な笑みを浮かべた

「お嬢ちゃん、あたしをご存知？」

『……モルガナ…アースラの…妹の…』

私がアースラの名前を出すと、ピクッと眉が揺れ不機嫌そうな顔になる
だがすぐに最初の貼り付けたようないやらしい笑みに戻ると、彼女はその細い腕で私に触れた

「サメにしては頭が良さそうだ、賢い奴は嫌いじゃないよ
…さて…どうして泣いていたんだい？話してごらん？」

『…なんで…そんなことに興味を持つの…？』

「なに、ただの好奇心さ
それに…そんなに悲しそうな泣き声で泳ぎ回られちゃ、気になって仕方がない
だからほら、話してすっきりしちまいな」

きっと私はどうかしてたんだと思う
それでも誰かに聞いて欲しくて
この辛さからなんでもいいから助けて欲しくて

私はモルガナに全てを話した

「…そうかい、裏切られちまったんだねェ」

『…ｸﾞｽｯ…』

「あぁおよし、泣くんじゃないよ
そうかい…それは大層…

憎いだろうねェ」

『…え？』

憎い…？私が…アリエルを…？

「だってそうだろう？お前はこんなにもアリエルを想っていたというのに、アリエルはお前を見捨てて地上に行った
お前にはアリエルしかいないのをわかっていながら！！自分のことだけを考えて！！！」

モルガナの大きな声が私に突き刺さる

「可哀想なマミ…唯一の救いに捨てられ、裏切られ！！！それでも一人で悲しむことしか出来ない！！！」

ズキズキと
事実であるが故の痛みを抱く

だってわたしには誰もいない

アリエルのように
厳しくも優しい父も、たくさんの姉も
共に歌う友達も、仲間も

なにも

「わたしとおいで、哀れなサメの子」

『…！』

「ちょうど今私の仕事を手伝ってくれるやつを探していたんだ
いることにはいるんだが…頭が足りなくてねェ…
あんたみたいな賢い奴がいてくれると助かるんだが…」

『…私が…必要なの…？』

にんまり、と最初に会った時と同じ不気味な笑み
それがどれだけ不気味でも、必要とされなかった、誰かの言葉が欲しかった私にはモルガナの言葉だけが救いに感じた

いや

「わたしとおいで、マミ」

たしかに、救いだった

そして私は、ヴィランズとなった
かつての友への憎悪を胸に

日々は過ぎて行く
増幅していく思いと共に