一匹の悪役の話 (ページ16)

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12話ページ16

リクルーティングのメンバーを見送った後、昨日できなかった書類を片付けようと自室に向かった

廊下の曲がり角を曲がると、少し先に見える紫色

…エイトフット

朝食を食べに行くのだろうか、眠そうにあくびをするその顔には、昨日私の手によって出来た頬の腫れが見えた
部屋に行くために彼に近付くと、あちらも私に気付きこちらを見据える

何か言いたそうな彼の横をそのまま通り抜ける
話すことなどない
そのまま自室に入ると、後ろ手でがちゃりと鍵をかけた

さて、書類片付けなきゃ

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--------アップルside--------
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女王様からいただいた毒林檎を磨いていると、がちゃりと広間の扉が開いた
顔を出したのはエイトフット
相変わらずの血色の悪い顔だが、少し普段とは違うように見える

…腫れてるな

「おはよう、エイトフット」

「おう…あいつらもうリクルーティング行ったのか」

「休みの日だからといってルーズすぎるんじゃないか？
規則正しい生活は大事だぞ」

「俺だってそうしてぇが…仕事があるんだよ」

「…海の者は大変だな、マミもそうだが」

マミの名を出した途端ぴくりと奴の肩がゆれた
…そういえば、昨日のリクルーティング後の広間に2人の姿がなかった気がする

「…その頬はマミが？」

「……あー…まぁ…俺が悪いからな…自業自得だ」

はぁ、と大きなため息をつくエイトフット
あのマミでも手をあげる時があるのか、と驚くと同時に、こいつはどれほどのことをやらかしたんだと呆れた

まだ出会ってから短いが、マミが非常に心の広いヴィランズだということは皆がとっくにわかっていることだ
ヴィランズらしくはないが、それが彼女の個性なのだろう
数日でわかるくらいの優しさを持つ彼女を怒らせるとは、よほどのことをしたに違いない
おそらく、ほかのメンバーでもこの結論にたどり着く

確実に、こいつが悪い

「何をしたかは知らんが、悪いと思うなら謝罪をしておくんだな
早い方がいいぞ、言いにくくなるらしい」

「…はぁ…めんどくせェ…」

「お前がやったことだろう」

「…分かってる」

ヴィランズゆえにか、我々は謝罪というものに慣れていない
これは長くなりそうだ

またため息をこぼすエイトフットを置いて、アップルパイの下準備のためにキッチンに向かった