一匹の悪役の話 (ページ35)

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30話ページ35

「っあー痛ぇ…」

エイトフットの下半身が人へと戻る
傷が痛むのだろう、眉間に深いシワを作りながら私に近付き、がしがしと私の頭を乱暴に撫でてきた

「ったく面倒かけやがって」

『ご、ごめん』

「貸し一つだ」

手つきも言葉も乱暴なのに、なんだか暖かい
彼なりの不器用な優しさを感じて嬉しくなる

鎖をとってくれるつもりなのだろう、エイトフットの手が私の横に伸びた

「…とれねぇ」

『へっ？』

ぐいぐいと力強く鎖を引いてるのがわかる
…でも、微動だにしない
その時、彼の後ろからあの勘に触る高笑いが聞こえた

「ヒャハハ…そのクサリはなぁ、そいつの魔力で作ってんだヨ
ここはその女のユメのなか…そいつの魔力が一番効力を発揮する…
解くのは、女自身じゃないとできネェぜ」

「マミ自身だと…？」

「ムリだよなァ？魔力枯渇してるもんなァ？？
オマエ等は夢からでれるかもしれねェが、女は道連れダ…！」

ヒャハハハハ！！！

せめて私だけでも道連れに、ということか
魔力がほぼ無くなり体の力が全く出ない今、私にこの鎖を解く術はない
せっかくたすけてもらったのに、これじゃあ…

「そんなことか」

「…ハ？」

「おいマミ」

なんてことはない、と言うようにけろっとした表情のエイトフットが私を見る

ちゅ

『！！！』

キス、された

と同時に
体に力が徐々に戻ってきたのがわかる

口から、エイトフットの魔力が吹き込まれてる
十分な量がうつったと判断したのか、彼はそっと唇をはなした
呆然としている私を怪訝な顔で見てくる

「…早く鎖壊せ」

『え…あ、うん…』

言われるがまま、自前の鋭い牙で顔の横の鎖に噛み付く
ばきん、という音と共に鎖はいとも簡単に砕けた
まだ立っていられるほどの力はもどっていないのを分かってたのか、倒れる前にエイトフットが支えてくれた

「残念だったな」

彼が勝ち誇った笑みを浮かべた後、私の視界は光に包まれていった

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「ハナセえええええ！！！」

甲高い叫び声で目が覚める
私のベッドの周りには手下のみんなと、スキャターとミスター
全員勢ぞろいだ

そして、目の前の壁には大きな真っ黒い穴
そこにミスターが近付き、なにやらばたばたと暴れる人形をかかげる

「それでは最後はこの一言で締めくくるとしようか」

“ハッピーハロウィン”

“ハッピーヴィランズ”

人形は、暗闇へと吸い込まれていった