旅の先 ページ47
｢……とは言っても……別にあてがある訳じゃないんですけどねぇ……｣
｢……｣
船を降り、適当な所へと歩き出す。
二人が降り立ったのはヨルビアン大陸のサヘルタ合衆国付近。
別に出発前に決めた場所ではない。
というか目的地であるミテネ連邦と同じ大陸とは言え、殆ど真逆の港に着いた二人。
『……まさか大陸をそのまま横断するつもりか？』
｢では、ここから歩いて行きましょうか｣
……どうやら、己の相棒であり主でもある彼女は思っていたよりも奇天烈であったようだ。
諦めたAは大きくため息をつき、無謀な挑戦を行うリーファに着いて歩いていく。
｢ふふっ、着いてきてくれるんですね｣
｢……ぶ｣
｢ありがとうございます｣
街へと入って、その辺で食べ歩き出来そうな食事を買う。
｢んぶ｣
｢美味しいですか？｣
それを咥え、そのまま歩くAはほんの少しずつそれを噛んでいく。
Aの口の中で広がる野菜と肉の香りが鼻腔まで刺激する。
『うまい』
｢……ふふっ、なら良かったです｣
自身もそれを頬張りながら、Aの様子を見て嬉しそうに微笑む。
｢どんどん行きましょうか｣
ずんずんと歩みを進める二人。
いくつもの街を抜け、やがて人の殆ど居ない荒野に出る。
｢……たまにはこういうのも良いですよね｣
『……そーだな』
二人だけの、何にも頼らず己の足のみで歩む旅。
今までの山の中の生活に近しい、しかし未知の体験が二人に訪れていた。
日が暮れて、夜。
テントを展開し、薪としてその辺の木の枝を集める。
あとはAが点火すれば、焚火の完成である。
｢……ふふっ、暖かい｣
｢ぶぅ｣
その辺の岩に座り、Aを膝に乗せて撫でる。
焚火に当たり暖を得て、二人の意識は微睡んでいく。
｢ん……寝ますか……おやすみなさい｣
｢ぶぅ……｣
寝袋に入り、Aの体毛を抱いて眠りに就く。
パチパチと燃える火の音が、二人を寝かしつける子守唄なのであった。
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作者名：クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時：2023年1月22日 13時
