いつもの日常 ページ40
少し質量の増えたリビングにて。
炭火の香ばしい香りが彼女の鼻を擽る。
｢ふふっ、懐かしいですね｣
｢そうね。貴女と一緒に食卓を囲むなんていつ振りかしら｣
｢なんだか安心するなあ｣
『炭火焼きなっつ』
久し振りに家族全員で朝食を摂る。
その後は薪割りだ。
｢“天照らす草薙の剣”｣
『ほいっ』
｢はっ！｣
Aの放り投げた丸太を、リーファが次々真っ二つに斬っていく。
流れるような作業で次々薪を産み出していくリーファに、若干二人は冷や汗を足らす。
｢……随分慣れてるわね……｣
｢オーラも随分増えて……僕達の出る幕もないかなぁ……｣
見ない間にかなり成長した我が娘とその付き添い。
やっぱり親としてやや複雑な気持ちなのだ。
｢出来ました！｣
｢……僕でも40分かけるんだけどなぁ……｣
キラキラとした目を向けるリーファに、二人はただただ苦笑いを浮かべるしかなかった。
｢A、行きますよ！｣
『テンション上がってるなあ』
久し振りの実家にテンションの上がっているリーファは、いつもAと駆けていた森へと飛び出していく。
｢懐かしいですね……！｣
幼い頃からずっと走っていた森は、もう手に取るようにその地形が把握できる。
『あー、ここがリーファと会ったとこか』
｢……初めてAと会った場所……ふふっ｣
見覚えしかない場所に辿り着き、感傷に浸るリーファ。
幼かった頃の日常に、暫く心を休ませる二人だった。
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作者名：クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時：2023年1月22日 13時
