燃ゆる新緑の意志 ページ16
アルマと別れ、部屋を出る。
丸三日動いていなかった為か、多少飛行姿勢がふらつく。
それでも動くことは出来る。
朝食はアルマが運んできてくれていた。
問題なく食べきれた、美味かった。
ちなみにそれは魔王が自ら作ったものだという。
一体どこまで完璧なのだ?
そんな疑念を抱きながら浮遊していれば、たまたま通りがかっていたリーファとフレアに出くわした。
「あら、東矢さん…お体は大丈夫なのですか?」
「あぁ、問題ない」
「そうですか、それならよかったです」
ほっと息を吐いた彼女にも、問いかけてみた。
「なぁ、なんでお前は魔王に仕えてんだ?」
「…何故、ですか…」
少しの間考えこむ彼女から、数秒して答えが返ってくる。
「色々とありますが…一番は…彼の人柄、でしょうね」
「人柄」
オウム返しに問い返せば、詳しく語られる。
「えぇ、私自身、マールドさんが魔王になる前からあの人とは知り合いで。何度かお話させていただいていましたね」
彼女の口から語られた彼の姿は、まさしく東矢の思い描いていた魔王像とは遠くかけ離れたものであった。
彼は、とても優しかった。
初めて出会ったばかりのリーファ。
魔物との共存に理解を示さない村人たちにより負傷していた彼女とフレアを、一切の色眼鏡なしに怪我人と判断して即座に応急措置を行った。
それが、魔物であったことにも関わらず、だ。
彼は、分け隔てなく優しかった。
魔物も人も、エルフもドワーフも。
種族なぞ関係ないとばかりに彼は数多くを救った。
的確に悩みの種を見抜き、それに見合った改善策を提案し、自らの腕の中に歓迎した。
彼は、視野の広い男だった。
全ての種族が憎み合うことなく、共存できる世界を願っていた。
そんな大それたはずの目標を、彼は真剣に叶えるべく魔王へと進化した。
「…そんな彼に、賭けてみようと思いまして。私もフレアも、似たような考えを持っていますから」
「ぐぁ」
…確かに、フレアは魔物だ。
しかし…あの戦いで見せた動き。
あれは、調教による単なる主従関係などでは決してない。
互いが互いを思いやり、絶対の信頼を置いている、絆で繋がった二人の戦いは、互いに穴を埋め合い、隙の無い強烈な連携を次々と放たれる厳しいものであった。
しかし、その考えも、今の世界では異端すぎる。
そんな世界を変えるべく立ちがっていたのが、マールドだった。
ただ…
「…マールドさんだから、というところもありますかね」
そう言って笑う彼女の瞳に、なんとなく腑に落ちた東矢だった。
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クロロフィル@リーフィア狂/あるりーす(プロフ) - 朱欄さん» ありがとうございます!これからも更新頑張りますね! (2023年1月14日 20時) (レス) id: c1253398fc (このIDを非表示/違反報告)
朱欄(プロフ) - Banana is Kami(作品最高です!キャラデザがすごく好きです!特にワイドちゃんがかわいい←あ、星押しときますn(() (2023年1月14日 20時) (レス) @page3 id: efb6a7397d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2022年12月29日 21時