神話の裏の、木漏れ日に。 (ページ49)

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喪ったものページ49

第二部隊隊員･富士峰アキラ、幟庵及び出田峰丸登。狂気山脈登頂。
及び、下山中の幟庵の事故死。
その記事は、当然のように飛ぶように売れ、瞬く間に丸登やアキラの名前は世界各地に響き渡った。
だが、その二人が歴史の表舞台に出てくることは殆どなくなった。

ネット上から、あらゆる紙面から｢マールド｣のペンネームは消えた。

代わりに、｢ロスト｣と名乗るカメラマンが世界各国を回り始めた。

｢オシスト｣の綴る記事には、もう｢マールド｣の名が挙がることはない。
ついでに、｢アキラ｣という登山家も消えたように姿を現さなくなった。

曰く、どこかの山に籠って環境保全を努めているとのことだが……真相は本人のみが知っている。

姿を隠した｢英雄｣たちの存在は、忘れっぽい世間の間ですぐに風化していく。
確かに歴史を塗り替えた彼らの存在を覚えている者が、一人、また一人と消えていく。

しかし、それはどうだってよいのだ。

英雄と呼ばれることを許せなかった二人は、それぞれの道を求めて我武者羅に生き続ける。

一人はその名を捨て、一人は護れる強さを求め。

一度交わり、そして別れた彼らの奇妙な人生が、再び交わる日は来るのだろうか。
神すら知らぬその数奇な運命を、彼らは今必死に生きている。

いくつもの大切な何かを、取りこぼしながら。