神話の裏の、木漏れ日に。 (ページ30)

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【犬斗】マイペースな子犬さん。【媒介者アフター】ページ30

そわそわ、そわそわ。

やっと帰ってくるという思い人を待って玄関口を右往左往するのは、犬斗の恋人であり、猫でもある燐。

｢うぅ……流石に心配にゃ……！｣

ドアノブが、ゆっくりと下がる。
同時にノックが鳴り、燐が飛び上がる。

｢けっ、犬斗！｣
｢う～……ただいまー……｣
｢おっ、おかえり！｣

やけに疲労しきった犬斗を受け止める。
ふと鼻を啜った燐だが、犬斗からは何か異質な匂いがする。

｢……ねえ、犬斗｣
｢なにぃ……？｣

腹に顔を埋めて匂いを嗅いでくる犬斗に問いただす。

｢ねえ、この匂い……知らない女の匂いがするにゃ。何日もほっつき歩いて何してたにゃ！｣

……精一杯怒鳴ってみせるが、語尾や体の小ささのせいで今一つ威圧感はない。

｢えーとね、世界救ってきたの！｣
｢……ふにゃぁ……？｣

予想もつかない返答に思わず困惑する。

｢えっと、それとともだちできた！｣
｢う、うにゃあ……？どういうこと……？｣

混乱する燐に、犬斗は事の顛末を話し出す。

不思議で奇妙な、それでいて楽しい友情を。

｢なるほど……にゃあ……取り敢えずウワキじゃないっすね｣
｢えっ、ウワキ……!? ちがうよ！そんなことしない！｣

慌てて否定する犬斗に、違ったのかと安堵の息をつく。

｢もー……心配したんすよ……｣
｢ごめん……でも帰ってきたよ！｣
｢もー……｣
｢えへへ……すき～｣
｢うう……ズルいにゃ……でも大好きっす……｣

はにかむ犬斗と抱き締め合っていたところ、盛大に腹が鳴いてくる。

｢う……お腹すいた～！｣
｢にゃはは……今日は新鮮なお肉っすよ！｣
｢わーい！｣

甘えん坊な犬と猫の平和な日常が、また始まっていくのであった。