【オシスト】恥を勇気に変えて。【毒入りアフター】 ページ12
｢……不味い、ですね｣
囲まれた。
その事実を理解することは本当に容易かった。
｢しくじった……！｣
今はマールドがいない。
一人での異世界旅、モンスターなりなんなり護衛を付けておくべきであった。
しかし今は後悔しても遅い。
誰かが助けに来るなんて、そんな夢物語はあるはずがない。
なら、自分一人の力だけでこの場を乗り切らなくては。
｢……ふぅー……｣
魔物の騒ぎ声が頭上に迫る中、オシストは大きく息を吐く。
｢……“世界凍結”｣
刹那世界から色が失われ、まるでプレイヤーのいないゲームのように全てが動きを止める。
｢さて……“身体強化”“加速”“高速思考”｣
以前陥ってしまったあの狂気。
あれ以来、一つの魔法というか能力というか、あるいはバグを生んでしまった。
その魔法の名は。
｢……“
その魔法を唱えた瞬間、オシストの意識が塗り替えられる。
｢……っ、あー……｣
代わりに生じたのは、オシストの深層意識に眠る｢オシストの中のマールド｣の人格。
｢……要は｣
時が動き出す。
解き放たれた五体の魔物は勢いそのままオシストに迫る。
腰を落とし、拳を引いて構える。
｢……こいつらを、ぶっ飛ばすっ！｣
気合いの籠った声と共に、固く握った拳を突き出す。
刹那、吸い込まれるように顎に直撃した右手は、身体に直接魔力を叩き込みぶっ飛ばす。
｢ちょっと、面倒だが、っ！｣
即座に腕を引いた勢いで身体を回転させ、回し蹴りで二体を蹴り飛ばす。
｢ずあっ！｣
そして残った二体のうち片方の伸ばす腕を掴み、振り回して残りに叩き付け、そして。
｢はあぁーっ！｣
思い切り、地面に叩き付け、さらに跳躍して踏み潰す。
｢……ふぅー……｣
気配が全て霧散したのを確認し、大きく息をついた、その瞬間。
｢あぁぁぁ恥ずかしい……本当に……リミット外す意味ではいいんですけど……せめて記憶後から共有する仕様どうにかしてください……｣
……本人の羞恥と引き換えに、オシストはいつの間にか強さを得ていた。
……尤も、翌日は全身筋肉痛に襲われてしまうし良いことなんてその場しのぎ以外無いのだが。
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作者名：クロロフィル@深緑の指揮者 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時：2023年6月3日 15時
