木漏れ日の差すアパートで (ページ48)

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勇者の一人遊びページ48

アパートから少し離れた、小さな林の中。

｢…｣

東矢は一人、佇んでいた。

響き渡るのは、木の隙間を吹き抜ける風の音、それにより揺れて擦れ合う葉の音。

ふと、東矢の背後で一枚の葉が枝から切れ落ちた。

刹那、鋭い破裂音と共にその葉に風穴が開く。

｢…｣

右前、左、真上、正面、右、右後ろ。

次々と落ちる葉を撃ち抜いていく。
その精度はすさまじく、全てにおいて撃ち漏らしがない。

そしてその弾丸は変身時の星型弾仕様になっており、木の葉と衝突した瞬間にその光が失われ木に一切の傷を与えることさえも許さない。

研ぎ澄まされた神経。
限界まで張り詰めた彼の動きは一切の無駄がなく、あらゆる角度の葉を撃ち抜いていく。

彼自身の反射神経と射撃精度を高める特訓であり、東矢自身の精神力、体力向上のための訓練でもある。

こうして彼が特訓にのめり込む理由は一つ。
マールドを超える、それが、かつての魔王と交わした約束であり、彼の目標なのだからだ。

確かにこの世界でのマールドとの戦いで、東矢はほぼ勝ちの状況まで追い詰めた。
しかし、最後に敗れてしまった。

それは、自分に体力が足りていなかったから。
自分がまだまだ力不足だったから。

そう結論付けた東矢は、ひたすらに己の身を鍛え続ける。

強さを求めて。
それは誰かを傷つける為ではなく、誰かを守る為の力。
誰かの物を破壊するためではなく、他の誰かの物を守る為の力。
裏切る為の力ではなく、恩義を返す為の力。

それを、東矢は我武者羅に求め続けていた。

｢…ふぅ｣

ふと、張り詰めていた息を大きく吐く。

その銃を仕舞い、変身を解いた。

…腹が減ったのだ。

辺りを見回せば、今は丁度太陽が頂点に達し…いや、むしろ過ぎてしまった後だろうか。

｢…遅くなったが…食いに行くか｣

昼食をまだ食べていない東矢は、すぐさま食堂へと駆け込むのだった。