木漏れ日の差すアパートで

勇者の挑戦 ページ39

勇者がその銃を構える。
光がその銃口へと殺到し、辺りに満ちる魔素が吸い込まれていく。

対する英雄もまた、その弓を構える。
グラグラと炎が揺れ動き、その勢いは格段に増していく。

…刹那、両者から放たれた射出音が激突し、大爆発を起こした。

凄まじい熱線と煌めきの中、英雄は突撃する。
その背後に一筋の雷を残しながら。

当然即座に反撃の弾丸が大量に飛来する。
それはまるで、というよりまさしく流星のごとく煌めきながら向かってくる。

張ったバリアは当然のように破られ、次々英雄の髪を貫いていく。

しかしその星の列は英雄に掠り傷以上のダメージを負わせることが出来ない。

目前まで迫った英雄の拳が、勇者目掛け振り抜かれる。

稲妻のごとし鋭い一撃は、空を切った。

｢…!?｣

そのことに驚く英雄目掛け、強烈な蹴りが炸裂した。

その背に大きな衝撃を受け、英雄の体が吹き飛ぶ。
即座に態勢を立て直し壁に着地すれば、足を振り抜いた勇者の姿があった。

｢さて、これは効いたか？｣
｢あぁ…格段に速く…いや、瞬間移動か｣
｢…観察眼はホント流石だな…やっぱり世界は違えどマールドはマールドってか…｣

苦笑しつつも再び大量に流星が降り注ぐ。
今度は上空からの撃ち降ろしだ。

空中に立つ勇者目掛け、英雄は駆ける。
自らバリアで足場を生み出し、流星群の中を突き抜けて行く。

勇者の一瞬の溜めの直後、一際大きな隕石が英雄の行く手を阻んだ。

｢ッ、オラァッ！｣

英雄の紅蓮の拳と光り輝く隕石がロッシュ限界を起こし、英雄の勢いが止まる。

｢…互角、か…強いな｣

口に付いた血を拭い、笑みを浮かべる。
再びそこから飛び上がり、次々足場を生み出しては蹴って登っていく。

その一瞬の隙に、勇者は先程の隕石を大量に撃ち出した。

先程のような華麗な流れ星とは違う、実に凶悪な凶星の軍勢。

対する英雄からは大量の閃光が解き放たれる。
それは何よりも疾く敵を貫く光速の矢。

それは隕石をも貫かんと激突し、幾本が結集してようやく一つを打ち砕く。

しかし、一つ破壊できれば十分であった。

開かれた道を一気に駆け、遂に英雄と勇者が相まみえる。

｢はあっ！｣
｢ッ。ずあッ！｣

双方から放たれた拳が衝突し、衝撃破が辺りの物を吹き飛ばす。

その瞬間、壮絶な肉弾戦が始まった。

双方の体が交わる度衝撃が世界を襲い、文字通り火花が飛び散っていく。

住民たちは、ただそれを固唾を飲んで見守るしかなかったのだった。

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