木漏れ日の差すアパートで (ページ38)

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戦闘の幕開けページ38

｢はは…アンタやるな。まさか真正面から普通にバリア破ってくるとは｣

まさかいきなり銃弾一発でバリアを破られるとは思ってもいなかったマールドが感心する。

｢そりゃどーも。こちとら四六時中戦い漬けなんで、なっ！｣

褒められたにも関わらず苦い表情の東矢は更に銃弾を乱発する。
しかしそれらは一見雑な拡散弾のように見えてその全てが相手を誘導し追い詰める為の道を密かに形作っている。

…最も。

｢…まぁ、別に全部防ぐ必要はないよな｣

この男は当然只者なんかではない。
防げないなら躱せば問題なぞないとばかりにすいすいとすり抜けて進んでいく。

｢相変わらずおかしいっておい…｣

乾いた笑みを浮かべる東矢には一切の余裕が見られない。
とにかく飛び回って銃弾を放ちまくるもその全てが避けられる。

｢…ッ…｣

一瞬力まれ生まれたその刹那の間を、マ－ルドは見逃さなかった。
その瞬間に放たれた銃弾のみを大きく回避する。

｢うおっと…やっぱ避けて正解だったか｣

それは着弾と同時に弾け、更に小さな弾丸を辺りに撒き散らす。
幸い即座に離れていたおかげで命中することはなかった。

｢あー…やっぱこれも防がれるよなぁ…｣

冷や汗を拭い、更に銃撃を続ける。
その中をまるでダンスでも踊っているかのような華麗で無駄の無い動きですり抜けていくマールド。

｢…あぁ、大体わかった｣

そう呟いた刹那、マールドの右手に生成された弓矢が一瞬で引かれ、稲妻の如く凄まじい勢いで突き抜けていった。

｢っ、ぐうっ…！｣

射撃に集中していた東矢の反応が一瞬遅れ、左腕に電撃が迸る。

｢…あークソ、やっぱし何から何まで隙がねぇ…｣

そう愚痴る東矢だったが、冷や汗を浮かべていたのはマールドも同じ。

｢…フルパワー、出せよ｣

彼にしては豪く好戦的な表情を浮かべ、そう言い放つ。
そしてそれを聞いた東矢はやれやれと言わんばかりに肩を竦めた。

｢はぁ…まぁいいさ。あれ相変わらずクソダサいけど…な！｣

その刹那、緑の閃光が一面を支配する。
観客の多くがその眩さに目を瞑り、マールドは真正面からそれを見据える。

｢…ノーブルグリーン、今ここに見参｣

緑を基調としたカラフルなフルアーマー。
派手嫌いの東矢が変身を渋るのも納得がいく。

｢へぇ…面白いじゃないか…ラウンド2、と行くか｣

不敵に言い放つ彼は、やはりあの時の魔王と瓜二つなのだった。