木漏れ日の差すアパートで (ページ32)

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☆当たり前とは―――？ページ32

日が傾き、西へ西へと進んでいく。
夕焼けに染まりつつある空の下、魔法陣が起動した。

｢…ふぅ、疲れたな…｣

緑の髪に、黄色と赤のオッドアイの少年が現れる。
もちろん、マールドだ。

自分の肩を解しながら、エントランスまで歩いてきた。
すると丁度東矢と目線が合う。

｢…隣人か？｣
｢あぁ、アンタ新顔か｣

すぐに気づいたマールドが、椅子に座る東矢に近づく。

｢僕はマールド、一応人間だよ。アンタは？｣
｢俺は、東矢。草薙東矢だ。よろしくな｣
｢東矢か…こっちこそ、よろしく｣

お互いに自己紹介を済ませ、話を進めていく。

｢…んで、アンタなんでこんなとこに？｣
｢あぁ、俺は…そうだな、心を癒す為、か？｣
｢おう…疑問形か｣
｢おーよ。俺自身はまだ大丈夫なんだが…いつ倒れちまうか知ったもんじゃないからな｣
｢そういうもんか｣
｢そーゆーもんだよ。マールド、お前は？｣
｢僕もまぁ似たような感じか…最も、あまり癒されることは出来てない気がするが｣

苦笑いを浮かべ、空を見やるマールド。

｢…んで、東矢、アンタ仕事は何やってるんだ？｣
｢俺はヒーローだぞ｣
｢へぇ、“ヒーロー”｣

そう問い返せば、すぐに返答が帰ってくる。

｢そーだな、ヒーローだ。いわゆる特撮ヒーローとかそんな感じだ。町で暴れる怪人を止めて平和を守るために戦う奴だ｣
｢そうか…｣

『ヒーロー』という言葉に引っ掛かりを感じるのかマールドの眉がわずかに下がる。

｢…あ、ちゃんと魔法少女もいるぞ？｣
｢ついでみたいに言うな｣
｢…まー、俺もあいつも世間からすれば嫌われ者だけどな｣

ため息をつく東矢。
疑問に思い、問い返す。

｢ヒーローなのにか？｣
｢そうそう、変だよなw｣

笑う彼の瞳は笑っていない。

｢…俺もアイツも、家族とか友人(ダチ)とかの為に頑張ってんのによ、世間一般じゃよぉ？やれ怪しいだの、やれ裏切るだの、やれヒーロー辞めろだの、酷いやっちゃ｣
｢…そう、なのか…世知辛い世の中だな｣
｢全くだよ。アイツのこと理解してやれんの俺ぐらいだし。アイツまだ学生なんだぜ？俺みたいな大人が支えてやれなきゃ駄目だってのに｣
｢へー、ちなみにそいつのことはどう思ってんだ？｣

ほんのりとニヤケ顔を抑えながらマールドが尋ねる。

｢ん－、どうだろうな。少なくとも間違いなく良い奴だとは思ってるが｣
｢…そうかい｣

その返答を聞き、ほんの少しだけつまらなそうにするマールドであった。

…三馬鹿(厄災)の帰還まで、残り一時間。