木漏れ日の差すアパートで (ページ31)

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新たな入居者ページ31

｢…あのー、ここってまだ部屋空いてるのか？｣

そんな声が、エントランスから響いてくる。
誰かと思って見てみれば、緑の髪の青年がそこに立っていた。

｢おや、入居希望ですか？｣
｢あぁ、そんなとこだ｣
｢でしたら、まだまだ部屋は空いていますので。すぐに手続きできますよ｣
｢そうか、なら頼む｣
｢かしこまりました。お名前は？｣
｢俺は東矢。草薙東矢だ｣
｢東矢さんですね…はい、鍵はこちらになります｣
｢おう、これからよろしくな｣

鍵を受け取った東矢はその場から立ち上がり、自分の部屋を目指して歩き始める。

東矢の部屋番は109号室。

｢あーっと、ここか｣

鍵を挿し込み、捻る。
ガチャリと音が鳴りドアノブを下げればドアが開いた。

そして、その先に広がる部屋には、一面落ち着いた木調の床や壁、天井が広がり、いくつかの木製家具も設置されている。

ベランダからも外に出られるようになっており、そこから見上げれば巨大な大樹がこちらを優しく見降ろしている。
その葉の隙間から、温かい光が優しく降り注いでいた。

｢…想像以上、だな｣

思わずそんな言葉が口から零れ落ちる程には、凄まじい衝撃を東矢に与えていた。

…そうこうする間に腹の虫が鳴き始めたので、早速昼食を取りに行く。

｢バイキングか。…？“今日は”…？｣

見慣れない表記に戸惑いつつ、料理や野菜を取り分けていく。
どれもこれも新鮮で瑞々しく、美味しそうな野菜ばかりだ。

粗方取り終えたので席について食べてみる。

｢…うん、美味いな｣

嚙むとシャクシャクと良い音が鳴り、口中に穏やかな甘みが広がる。
青臭さもなく非常に食べやすい。

｢これなら子供でも食べられそうだな｣

…実際、ここに住んでいる住民は皆子供だろうと野菜を常日頃から取っている。
健康のためであったり、あるいは普通に美味しいからだったりと理由は様々だが、野菜を嫌っている者は誰一人としていなかった。

｢…健康にはよさそうだな…ごちそうさまでした｣

皿を返却口と書かれた隙間に投入すれば、皿は闇へと吸い込まれていく。
きっとこの先で洗っているのだろう。

トレイを置き、部屋へと戻る。

｢…心は休まりそうだな｣

確かに、このアパート単体で見れば、心休まる最高の別荘なのは間違いないだろう。

…問題は住民達の方なのだということを東矢が知るのは、あともう少し後のこと。