熱き決闘者たち ページ39
さて、まずは一勝である。
あと二勝すれば勝利、先へ進める。
｢…オレが行くよ｣
手を挙げたのは針を顔面に刺した彼。
彼はギラタクルと名乗ったが…
『イルミ＝ゾルディック、か』
彼の本当の名前はイルミ。
キルアの兄であり、当然殺し屋である。
そんな彼に相対するのは小さくとても強そうには見えない男だった。
｢さて、ご覧のように僕は体力に自信がない。殴ったり蹴ったりは論外さ｣
｢頭脳戦?｣
｢うーん、そうだね、でも簡単さ｣
彼が取り出したのは大小二本の蠟燭。
｢同時に蠟燭に火を灯し、先に火が消えた方の負け。どう?｣
｢わかったよ｣
当然多数決は5:0。満場一致である。
｢さて、恐らくどちらかに何か細工が施されているのは明らかですが…｣
｢流石にそんな安直じゃないだろうね…♣｣
イルミは少し考え…
彼の背後へ回った。
｢んじゃ、僕はこれで｣
｢あっ｣
イルミが取ったのは男が提示した二つのいずれでも無く、彼が隠し持ったもう一つの長い蠟燭だった。
｢…じゃあ僕はこれで｣
男は更にもう一つの短い蠟燭を手に持つ。
恐らくこちらも細工が施されていない物だろう。
さて、小細工一切無し、違うのは長さだけ。
そうくれば、勝敗はそれこそ火を見るより明らかだった。
｢ハイ、僕の勝ち｣
これで二勝目。
しかし消えるまでに五時間ほど有してしまった。
ほんの少しだけ、向こう岸の彼らが笑う。
｢成程…♥そういうことか♠｣
｢超長期刑囚、ですか｣
そう。
彼ら試験官は第三次試験官のリッポーに雇われた超長期刑囚。
凡そ百年は超える服役を、試験者を塔に留めた時間分、一時間ごとに一年の刑期短縮を約束して雇ったのだ。
因みに最初の大男は軍人、先の彼は連続爆弾魔である。
｢何なんだよそれ…!｣
『んな奴が試験官やってるとか…恐ろしいな』
全くだがこれがハンター試験というものである。
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作者名：クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時：2022年7月29日 19時
