飾磨御霊という男 ページ9
『続いてのニュースです。つい先日の大型怪人事件の裏で、ヒーロー名「暗夜」こと飾磨御霊さんが行方不明となっています。ヒーロー協会としては現在行方を調査中とのことですが、ヒーローの中でも主力である彼が消息を絶ったことに対して衝撃を受けているとのことです——』
「……クソ」
奏乃により建て直された事務所にて、ニュースを見る東矢の声が小さく響く。
普段ソファに座って片手に摘まむはずのポテチは、おやつの棚に仕舞われたままだ。
「……飾磨さん、まだ見つからないんですね」
「……あいつだぞ。能力も魔法もないのに努力だけで戦ってきた奴なんだぞ」
「えっ、そうなんですか!? てっきりあのオーラが龍騎と同じ感じの能力だと思ってたんですけど……」
ぽつり、と語りだした東矢の言葉に、今までそんな話を一切聞いていなかった奏乃が反応する。
一つ息を吐き、東矢は少しずつ御霊のことを話し始めた。
「これは、前世であいつに聞いたはずの話なんだが……あいつの使うそれは「覇気」というらしくてな。人間が形無き者……亡霊に関与するための技術で、御霊が前世でも今世でも家業にしていたゴーストハンターには必須の技術らしい。」
「そう、なんですか……って、じゃあ! 飾磨さんのあれは本当に純粋な実力ってことですか!?」
「そうなるな」
無能力でありながらあの剣術と体術のみで最前線を駆け抜け続けてきた御霊に、美冬が一目置いていることはもはや当然のことであった。
「だからこそ、だ。未だに信じられないんだ……あいつがよっぽどのことがない限り死ぬなんてこと無いはずなんだ……」
「っ……」
御霊の本質は、シンプルかつ高度で鋭い剣術と、覇気の応用技。
生命エネルギーを引き出し、ある程度体を強化しているとはいえ御霊のそれは単純だからこそそうそう打ち破れない。
美冬であってもその守りを突破して一撃入れることも難しいほどだ、御霊が相対したのはそれ以上の使い手か、はたまた恐ろしい能力を扱っているのかということになる。
「……絶対助け出しましょう」
「あぁ、当たり前だ」
東矢の手に握られたのは彼が愛用する一丁の拳銃。
自身の武器を握りしめ、東矢は決意の籠った声で呟いた。
その後ろ姿を、奏乃はまっすぐ見つめていた。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年3月16日 8時