修行再開 ページ8
颯真が転移先の座標を特定するまでの間、龍騎と柊真もまた鍛錬に励んでいた。
「っ、ふぅっ……“ドラゴンクロゥ”!」
「甘ぇ! オラァッ!」
実戦形式の組み手、それを見守る鉄司の体は以前よりもぼろぼろになっていた。
先の戦闘で随分ダメージを負ってしまった彼は奏乃に傷を癒してもらえたとは言えど、まだまだ傷が深かったらしくもう満足には戦えないらしい。
「そこまで! 龍騎、相変わらず愚直に攻め過ぎだ。お前の爆発力は相当だが、真正面から戦うだけがヒーローじゃねぇ。柊真も能力の活かし方がまだ甘い。精進しろ」
「はい!」
「へーい」
鉄司の一喝で組手を止めた二人は、昼食の用意に移る。
普段通りに料理を始めた柊真が口を開いた。
「……にしてもよ、オッサン随分と厳しくなったよな。前まではあんなにおちゃらけてたのによ」
「……うん……でも、オレたちに足りないものを指摘して直してくれるのは確かだから……これからもっと大事な戦いになるかもだから、ちょっとでも強くなっとかないと」
「そりゃそうなんだけどよ、どっかあいつの雰囲気変わったっつーか……」
小那覇との戦闘以降、鉄司による特訓メニューの内容が激しさを増した。
それだけでなく、鉄司が冗談を言ったりふざけたりすることが滅多になくなり、年相応に荘厳な立ち振る舞いをするようになった。
「……なんつーか……妙に落ち着かねえんだよな。なんか無理してるみたいに見えてイライラする」
「イライラって……心配してるだけでしょ、こんな時までかっこつけてんじゃねーよw」
「おいテメェ……でも、実際オッサン最近張り詰め過ぎてるしよ。満足に寝れてねーっぽいし」
「……うん」
鉄司の怒りなのか憎しみなのか、はたまた一種の失意なのか、絶望か。
それが何かはわからないし深い理由も知る由もない。
ただ一つ、確かに彼らが受け取ったものがある。
「……だからこそ、鉄司さんの分までオレらが強くなって、戦わないと」
「……おう」
フライパンで肉を炒めながら、二人は拳を突き合せた。
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年3月16日 8時