埋められぬ空白 ページ7
御霊が消えてから一週間。
未だに御霊との連絡がつかず、美冬らの事務所には暗い空気が漂っていた。
「御霊……嘘やろ……なぁ、病院に行ってたとかなんとかいっとくれんか……」
「……厳しい、と思う…………御霊、強いけど……負けない訳じゃ、ない」
「……せや、な……」
美冬とて信じたくはない、が。
御霊とて無敵ではない。
覇気を纏い飛ばすだけのシンプルかつ強力な能力だが、それ故に得手不得手が美冬以上にはっきりしている。
例えば東矢のように遠くから一方的に攻撃したり、あるいは機動力を奪ったり内側から行動を阻害するような能力への耐性が御霊は乏しい。
御霊が全く手が出なかったとは考えづらい。
あの現場に残された血痕は二種類、太いものと細い局所的なもの。
片方は御霊の大剣だろう、派手に瓦礫が叩ききられていることからも間違いない。
もう片方はおそらくナイフ、もしくはレイピアのような細い刃物の可能性が高い。
そこまで考えて、美冬の脳裏に一つの疑問が沸き上がった。
「……待てよ? 御霊がミスで瓦礫をあんなに叩き割るようなことがあるんか?」
あの精密動作性が高く隙のない御霊がここまで大量にミスをするのだろうか。
少なくとも平常時では超高速で飛び回る美冬を何度でも的確に捉えて攻撃してきていた。
覇気を飛ばす斬撃ならまだしも、直接大剣で切ったような痕が地面にも壁にもあった。
明らかにおかしい、何らかによって御霊は平常ではなかった可能性が高いと美冬は思い至った。
「……単純な能力者じゃないんやろうな……御霊を倒すなんて只者やないが……東矢たちでもやれるんか……?」
概念系の能力に対抗しやすい東矢が頼みの綱になるが、いかんせん能力がわからないうちは考えようがない。
「……気張らんと。絶対御霊を取り戻すんや」
御霊はまだ生きている、そのことを信じて美冬は一人鍛練室へと下っていく。
「……美冬……御霊……」
一人湯飲みを握りながらソファに座り込む愛奈だけがその場に残されていた。
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年3月16日 8時