憎悪の執念 ページ5
「や……やった……あんなあっさり……」
自分たちがあそこまで苦戦した相手を、こうもあっさりと倒されて美冬はしばし呆然とする。
相性は確かにあるのだろう。
遠距離攻撃や上空での高速機動を持たない美冬や龍騎にとっては大型の怪人に対する攻撃や回避は難しい。
防御手段も愛奈頼りな彼女らではどうしても傷が増えてしまう。
能動的に接近でき、かつ相手の攻撃を完璧にいなせる東矢がいたからこそ、奏乃は最大出力で殴ることだけに集中できるのだ。
「見ないうちに随分強くなってるね、あの二人」
「せやな……想像以上や……」
特に東矢、この間に何があったかは知らないが、能力の使い方で一皮剝けたような印象が見受けられる。
より柔軟に重力操作という特性を使いこなし、更には奏乃との合体技まで編み出していた。
「さて……無事か?」
「あぁ……助かったわ……とりあえずこいつら休ませな……」
「いや、まだだ」
「……ホンマ?」
まだ臨戦態勢を解かない東矢、その視界が向かうずっと先に、まだ僅かに魔力が残っている気配がした。
「……!」
そこには全身ボロボロになり、衣服の大半が破けながらもふらふらと立ち上がる小那覇の姿があった。
「お前ら……! 全員許さねえええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!」
絶叫と共に飛び出した小那覇の全身が、漆黒の光に包まれる。
それは巨大な怪物に変貌したときに似ているが、しかし一同はその目論見にいち早く気付いた。
東矢たちを巻き込んでの自爆。
自身の命をも厭わない、怒りに任せた最期の復讐。
「“アッパーフォース”!」
「“聖絶”“隔離領域”」
「“範囲縮小”“彼岸船”!」
自爆する寸前、咄嗟に上空へと小那覇を吹き飛ばした東矢に続き、その体を何重にも障壁が覆いつくす。
「があああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
瞬間。
恐ろしい程の炸裂音と共に凄まじい風圧と瘴気が解き放たれ、夕暮れの空を暗雲が埋め尽くした。
瓦礫が吹っ飛ぶ、風と瓦礫を防ぐために展開した障壁が破壊され、愛奈たちも吹っ飛んでいく。
壮絶な爆風が収まった時、その場には荒地と咄嗟に重力で地面に仲間を縫い留めた東矢だけが残っていた。
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年3月16日 8時