二度あることは三度ある ページ3
突風が吹き荒れる。
激しい風圧、吹っ飛ぶ瓦礫の山に耐えつつ、美冬は小那覇が爆発した方角を見る。
「……どうなったんや……やれたんか……?」
「っ、ぐ……」
完全に力尽きた龍騎を背後に、状況を確かめるため目を凝らした美冬。
砂塵が収まった時、美冬の目はギンと見開かれていた。
「ハァー……ハァーー……ハァー……ヨクモ……ヨクモヨクモヨクモオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
激しい咆哮。
かろうじて人語とわかる咆哮は、その怪物の生存をそのまま示していた。
一回り程小さくなり、その人間としての顔の原型を若干取り戻したその姿は、完全な怪物形態よりもひどく不安定で醜悪だった。
どす黒く膨れ上がった体に、不定形ながらも発狂する骸骨にも似た醜悪な頭部が大きな黒い首輪を経由してくっついた、恐怖と狂気と怒髪天を具現化したような、そんな不安定な存在。
「なんでっ……まだ……」
「うそやろおい……」
「えぇ……しぶと……えぇ」
「…………嘘……」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
ほぼほぼ魔力を使い切り、それでもなおピンピンしている小那覇に思わず弱音が出てしまう。
そのドン引きを他所に、小那覇は再び跳躍した。
化物形態よりも速く。
大きさの代わりに速度を手に入れたその巨体が、着地して一同を踏み潰さんと疾走する。
この中で現状最も動ける美冬ですら回避は間に合わない。
龍騎は立ち上がることもできず、愛奈と颯真の回避は出来ない。
柊真も鉄司も気絶し、戦況は絶望的だ。
せめて御霊がいてくれさえいれば、なんて思ってしまう。
「はは……うちも終わりかぁ」
刀を構え、己の死期を悟った美冬が、せめて仲間を守るために最後の一太刀を浴びせようとする。
「……み、ふゆ……さん……!」
「龍騎……うちがちょっとでも時間を稼げば……あいつらもつくかもしれへん……」
「駄目! それじゃ美冬が……!」
愛奈が声を張り上げる。
自身の体に鞭打ち、魔法を展開しようとステッキを構え、残り少ない魔力を練り始める。
「……愛奈もできて一回やろ、うちがやらなアカン」
「……本気?」
「勿論や、後輩の一人や二人守れへんで、何がヒーローや……!」
覚悟を決め、小那覇と向き合おうとした美冬の背中に、声をかける者がいた。
「その心配はねぇよ。もう十分だ」
「私たちが……終わらせますっ!」
「……!」
東矢と、奏乃だった。
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年3月16日 8時