激情 ページ1
凄まじい衝撃に襲われた龍騎だったが、その全身には痛みはなかった。
「ぐっ……はは、俺も……まだまだ……だな」
「……!」
龍騎の眼前、拳に胴体を抉られて膝をついていたのは鉄司だった。
咄嗟に自身の体を硬化させ、致命傷は免れたものの受けた傷は凄まじい。
「“再生”……!」
「っ、マジか……!」
愛奈が回復を試みるも、回復を専門としている訳ではない愛奈では傷を塞ぎきれず、鉄司はバタリと倒れ込む。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
勝鬨の咆哮なのか、はたまた怒りなのか。
凄まじい声量で吠える怪物が、大きく跳躍し今度こそ龍騎に襲い掛かる。
「オッサン! お前ら守れ!」
咄嗟に柊真が龍騎ごと鉄司を守るため大量の闇の傀儡を召喚し、防御を試みつつ二人を退避させるための時間を稼ぐ。
「GUOOOOOO!」
「があっ!?」
直後、闇人形をまるで蟻のように踏み潰した小那覇の口に光が集まり、破壊光線が放たれる。
咄嗟に防御を試みるも一瞬で貫通され、柊真の変身が解除されてしまった。
「……クソッタレ……が……!」
「柊真……!」
「構うな! アレはホンマにアカン奴や!」
次々と仲間が脱落していく中、龍騎の冷静が失われようとしている。
美冬が必死に呼び止めるも、龍騎の頭は既に激情に支配されていた。
「てめぇ……オレの仲間たちをよくも……!」
「龍騎! 戻……」
そこまで言いかけ、美冬は気づく。
龍騎の纏う雰囲気が、格段に変わった。
圧倒的な威圧感、一流ヒーローにも負けない覇気を纏い、龍騎は敵を睨みつけていた。
怒り。
仲間を次々に倒されたことによる激高がトリガーとなり、龍騎の力は今までにない程に高まっていた。
今の龍騎なら、届くかもしれない。
そう考えた美冬だが、しかしすぐにその力に果たして龍騎の体が耐えられるのかということに思い至る。
「龍騎! 今の自分は怒りで我を忘れとる! 確かに今の自分はアイツにも匹敵しうるかもしれへんけど……冷静になるんや! うちらじゃ相性が悪すぎる! これ以上やったらホンマに皆死んでまう!」
「だから……戦うんだろ……!」
制止も振り切り、龍騎は黄金に煌めく爪を構えて踏み出す。
先程叩き込んだ以上の、渾身の一撃を。
皆を守るために全力と怒りを込めて。
史上最大の一撃を——!
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年3月16日 8時