世界の歌姫に花束を 75 ページ32
良かった、一先ず
操られていた二人を無力化できた
はーはー、と息切れをしながら
ブルックさんとハイタッチする
ボロボロなエースと、同じく
怪我だらけのロビンさん達と合流する
「今のウタか!?すげーな!!」
「えへへ〜」
「麗しい君に守ってもらえたなんて・・!
惚れ直しちゃうよぉ〜〜!!!」
「ありがと、ウタ・・・
助かったわ」
「ウタありがとうな!
大変だったよ〜、ルフィと戦うの」
「んふふ・・・そういえば・・
A知らない?こっちに来てるはずなんだけど」
「あー、Aなら多分・・・
マルコとわさびと一緒に船へ行ってるぜ
あの黒い楽譜喰らって、操られなかったんだけど
意識がなかったんだ〜」
「そうなんだ・・・Aにはこういう・・
精神系の能力は効かないんだね」
感心していると、噂の黒い楽譜が
上空で束になっていた
また、何か、してくるの・・?
警戒して、じっと見つめていると
悲しい、声が聞こえた
『もっと、生きていたかった』
『音楽を奏でて』
『まだ、作りかけの楽譜や』
『楽器があったのに』
『大好きなあの人のための音楽』
『死んでしまう前に・・』
『大好きな人達と一緒に』
『生きて、いたかったれす・・・』
「・・・・トンタッタ族・・ううん・・
・・・・この島のみんなの・・」
「どうしたー、ウタ?」
私が見えている、あの黒い楽譜の塊は
皆には見えていないのか
「・・・あのね、ここの島の人達
音楽が大好きだったの・・・
・・・そんな人たちに、贈るプレゼントは・・
何がいいのかなぁ・・・」
皆はきょとん、とした表情をしている中
ロビンさんがふふっと朗らかに笑って
「貴方の唄が、最高のプレゼントだと
私は思うわね」
「・・・・・えへへ!」
私は、その黒い楽譜の塊に向かって
すぅと息を吸い、呼吸を整え、唄を届ける
この風は、どこからきたのと
問いかけても、空は何も言わない
この歌は、何処へたどり着くの
見つけたいよ、自分だけの答えを
まだ知らない海の果てへと、漕ぎ出そう
ただ一つの夢、決して譲れない
心に帆をあげて、願いのまま進め
いつだって、あなたへ届くように歌うわ
大海原を駆ける、新しい風になれ
唄を届けると、その黒い楽譜の塊たちは
泡状になって、消えて
そして、強い風が私たちを通り抜ける
『・・・ありがとう』
「・・・・・うん」
風は大海原を駆けて行った
・・・・ような、気がした
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作者名：ロモォコ | 作成日時：2023年8月4日 23時
