世界の歌姫に花束を 66 ページ23
お母さんの言葉は途中から紡がれなかった
だけど、私にはわかる
ゆっくりと顔を上げて、私は
彼らの腕の中から離れ
代わりに手をぎゅっと握る
「お母さん、お父さん・・
一緒には、行けない・・・ごめんね・・
わたし、まだ、好きな人たちと、一緒に居たい
どれだけ世界から、生きていくことを非難されても
・・・まだ、生きていたい
大好きな人たちに囲まれて、自分の幸せのために
生きて、いたいの」
私の実直な言葉を聞いた両親は
ポロッと、一筋の涙だけ流して
笑顔で頷いてくれた
『そう・・・そう・・・』
『素敵な人達と、出会ったんだね』
「うん・・・・!!」
両親の姿が足の方から消えかかっていき
お別れの時間だ、と察する
私は彼らの手をそっと、離した
「大好きだよ、お母さん、お父さん・・」
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瞳をふっと閉じて、もう一度開けると
目の前にいた両親はいなくなっていた
代わりに、いたのは
「ウタちゃん・・・・っ」
「ウタさん、大丈夫ですか?」
Aの腕の中で眠っていたらしい
ブルックさんと、彼女が顔を覗き込む
私はゆっくりと体を起こして
彼らの顔を交互に見た
「ふ、二人とも・・・ごめん!
勝手に離れてごめんなさい・・」
「ヨホホ!謝る必要はありませんよ
冒険とは、こういうものです」
「・・・・ブルックさん甘やかさないで」
「おや、怒ってます?」
「ちょーっと、だけ・・・
・・・・・本当に、無事でよかった・・」
ぎゅう、とAは
優しく抱きしめてくれた
私も、彼女の小さな背中に手を回して
顔を胸の間に埋めた
「・・・ありがとう、A、ブルックさん」
「ヨホホホ!さて、ここから出て
一度船に戻りましょうか・・・
調査は粗方進みましたし」
「そうですね・・・ウタちゃん立てる?」
Aに支えられて、立とうとした瞬間
小さい何かが私たちの周りを囲む
「むっ?!また来たんですか!?」
「ッ囲まれたかも・・・」
「・・・生き物・・・?」
3人で背中を合わせて
飛び掛かってきそうな気配に警戒する
すると、その中の1つが私の方へ飛び込んだ
「わっ!!?」
「ウタちゃん!?」
「無事ですか〜!?」
飛び込んできた何かは
私の胸にしがみついて、なんとかよじ登る
そして私の肩に上り終えると
「うたひめさま!」
「生きてたれす!」
私の肩にいたのは、可愛い可愛い小人さんだった
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作者名：ロモォコ | 作成日時：2023年8月4日 23時
