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世界の歌姫に花束を 65 ページ22

ドォン、と扉が破られて
海賊たちが中に侵入してきた
お母さんは、すぐに私を背に回して
鋭い眼光で海賊たちを睨んだ

海賊の船長は、すぐに
悪魔の実に目線を移すが
一口欠けていることに気が付くと
怒りで震えながら、話し始めた



『お前が食ったのか!?』


『いいえ、食べたのは私の娘よ
言っておくけど、この子を殺しても
すぐ実は手に入らないわ!!

また、何百年と悪魔の実は彷徨い続ける!
・・・残念だったわね、苦労してここまで来たのに』


『・・・・なるほど、賢い母親だ
これで・・子供だけは殺せなくなった』


『ええ!?船長正気か?』


『従わなかったら、売り飛ばす
従えば、俺たちの船でこき使ってやるさ』


『ったく・・・』



海賊の一人が部屋の奥へ進み
お母さんを押し退いて
私の体を持ち上げて連れて行った



『やー!!!ままぁー!!!』


『ごめんね・・・ごめんねっ・・
ウタちゃん、ずっと、愛してる・・・
ママも・・・パパも・・・・!!』


『おい、早く子供は外へ連れ出せ
可哀そうだろ・・・自分の母親が撃たれる瞬間を
見せられちまうなんて・・』



幼い私は大きな手で目を覆われ、そのまま
家の外へと連れ出された後

カチャ、と銃口がお母さんの額に当てられ
お母さんは最後、目を閉じる

・・・私も、咄嗟に目を瞑った
ドォン、という音が聞こえて
泣きながら、目を開けると・・



過去の記憶から帰って来れたようで
目の前には、両親が心配そうな顔で
私のことを見つめていた


私は泣きながら、両親の顔を見つめる
すると、お父さんが唇を震えながら



『守り切れなかった・・
僕らは、たった一人の小さな娘を
・・・守り切れなかった・・』


『・・・っごめんなさい、貴方が・・・!
ッあなたが、苦しんでいるのは・・
全部、全部・・私たちの所為よ・・・』


『すまなかった・・・本当に・・
辛いとき、傍にいてやれなくて・・・』



私は何も言わずにふるふると頭を横に振って
両親の言うことを否定した

そんなことない、守り切れなかった、なんて

私の体に宿るこの実は
お母さんと、お父さんが
生き残らせようと、守ろうとしてくれた証

今までそんな風にこの能力のこと
考えたことなんてなかった


ただひたすらに両親の腕の中で
泣きじゃくっていると
お母さんが、声を震わせながら言った



『ウタちゃん・・・
・・・この、世界で、生きていくことが・・
貴方にとって、辛かったら・・・ッ

ママと、パパと・・・
一緒に・・・』

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作者名:ロモォコ | 作成日時:2023年8月4日 23時

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