世界の歌姫に花束を 62 ページ19
そっと目を開けると
目の間には、裾に鍵盤の模様が入った
黒いワンピースを着て
髪の毛を三つ編みにくくっている女の子がいた
「A、この子・・・
・・・お化けじゃない・・」
ふっと、隣を見て
彼女にそう声をかけるが
「・・・っえ!?A!?
ど、どこに、行っちゃったの・・?」
『大丈夫、ちょっとだけ
席を外して貰ったの』
感覚的に、Aと似たような
能力を持っているとすれば・・・
・・・移動したのは、私の方かも
ともかく、Aの無事を祈りながら
目の前に立つ女の子と対話した
「・・・あ、貴方は、誰なの?
ここへ、私を連れてきたのは・・」
『えぇ、私よ、他の楽器たちに助けてもらったの
私は、貴方の両親の持つピアノ』
突拍子もないことを言われ
頭が混乱してきた
というか、両親・・・!?
もし、もしこの子の言っていることが
本当なら、ここは、この家は・・
「・・・ここは・・
・・・・・わたしの、産まれた家・・」
『えぇ・・・その通りよ・・!
おかえりなさい・・・』
その子は私のことを
体いっぱいで抱きしめてくれた
肉体は、ないはずなのに
とても彼女の体温が暖かくて
私もぎゅうと、彼女を優しく抱きしめる
すると、彼女は私に聞いた
『・・・会いたい?
貴方のお母さんと、お父さんに』
「あ、会える、の・・・!?」
『私の力で、少しだけ会えるよ
彼らの魂はずっとここにいたから』
私は、震える声で
会いたい、と言葉を吐露した
瞬間、目の前が光に包まれる
眩しくて、目を瞑って、少し時間が経つと
あれだけ眩しかった光が消えたようで
そっと、瞼をあげた
途端に、暖かい体温が私を包み込んだ
-------------
「・・・ウタちゃん・・?」
彼女の感触が消えた気がして
そっと目を開けると
目の前には、女の子のお化けが変わらずいる
「・・・・ッ」
『・・大丈夫よ、ちょっと
過去に戻って貰っただけ・・』
「・・・お化けじゃないですよね?」
『違うわ、私は・・・
物に宿る魂の一つよ』
「あ、あぁ・・・なるほど・・
クラバウターバンの一種ですね」
それなら、害はないか、と
ほっとして立ち上がると
妖精は私の目を見据えて話し出す
『今、あの子は・・
産みの親に会ってるの・・・・』
「ど、どうやって・・」
『私の力・・・
あの子の両親は、ずっと、ずっと
魂のまま、ここで待ってたの
・・私は、楽器の妖精だから・・・
音と、音を繋ぐように
魂と、魂を繋げられるの』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 72人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ロモォコ | 作成日時：2023年8月4日 23時
